生産性を引き上げるしかないのか

おそらくは、(1)の方針を採る会社が大多数と思われます。(2)~(4)の手段は、それぞれにクリアしなければならないハードルが高いからです。それに加えて、今回の同一労働同一賃金ガイドライン案では、給与差が問題にならないケースとして、次のような事例が記載されています。

<問題とならない例>
B社においては、定期的に職務内容や勤務地変更がある無期雇用フルタイム労働者の総合職であるXは管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務内容配置に変更のないパートタイム労働者であるYのアドバイスを受けながらYと同様の定型的な仕事に従事している。B社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における職業経験・能力に応じることなく、Yに比べ高額の基本給を支給している。

まさに、イオンなどの店舗ビジネスにおいても、幹部候補生である若手社員とパート社員の賃金差は「問題にならない」というのです。そのため、現実的には試算したような給与格差是正は起こらない、ことになりそうです。

でも、それなら政府の意図した非正規社員の待遇改善は実現しません。やはり、「従業員の生産性を高めて、待遇改善を推し進めていく」ことが、企業が採るべき本来の姿ではないでしょうか。

そのためには、消費する側も、値上げや不便さにも寛容になる姿勢が重要になります。「そんなこと言ったって、家計が苦しいのに、絶対ムリ」といった声が聞こえてきそうですが、これも結果的に収入を底上げするために必要な過程と思います。

「もしも3%の値上げ受け入れによって、非正規社員の賃金が1.5倍にできるなら」

まあ、実際には小売業に比べて原価率の低い外食産業の場合には、7~8%程度の値上げが必要になりますし、そんな単純な話ではないのですが。企業努力だけでなく、消費者も努力しないと、実現しないテーマであることは間違いなさそうです。

(宇佐見利明=撮影)
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