警察が発表した「闇バイト」の驚くべき実態
4月3日、警察庁が発表した組織犯罪情勢によると、暴力団勢力は、警察庁が統計を取り始めた1958年以降、初めて2万人を下回った。一方で、メンバーらがSNSでつながり離散集合を繰り返し、犯罪を通して資金獲得を行う「匿名・流動型犯罪グループ(以下トクリュウ)」の活動が深刻化していることが明らかになった。
2024年、摘発されたトクリュウは、暴力団勢力の8249人を超える1万105人だった。
このうち約4割(3925人)は、SNS上の「闇バイト」に応募して犯罪に関与していた。
罪種別では、口座を転売するなどの犯罪収益移転防止法違反が3293人、詐欺2655人、窃盗991人、薬物事犯917人、強盗348人などとなっている。
ただ、摘発できているのは、特殊詐欺などの実行役が多く、「主犯または指示役」は1割程度(1011人)にとどまっているのが現状だ。また、犯罪の収益がマネーロンダリングされており、追跡が困難なケースが多いことも課題である。
警察庁の楠芳伸長官は3日の記者会見で「暴力団と匿名・流動型犯罪グループが互いに一定の関係を保ちながら、さまざまな資金獲得犯罪を敢行している実態がある」と述べている。
警察はアングラ化した暴力団とトクリュウが一部で連携していると考えられるとみているのだ。この点について、筆者は著書などで、元暴アウトロー(暴力団離脱後に社会復帰できず違法な資金獲得活動を行う者)や暴力団偽装離脱者等の存在を指摘している。
ドラマのような「潜入捜査」が現実に
こうした中、警察庁は、いわゆる「仮装身分捜査」の実施要領を策定し、全国の都道府県警察本部長に通達している。
仮装身分捜査は、捜査員が犯罪の実行者の募集に応じて犯人に接触する際、架空の運転免許証や住民票等を提示して行う捜査活動のことである。
実施要領においては、対象となる犯罪を、インターネット等を通じて実行者の募集が行われていると認められる強盗、詐欺、窃盗、電子計算機使用詐欺等とし、「他の方法では犯人を検挙し、犯行を抑止することが困難と認められる場合に、相当と認められる限度において実施する」とされる。
仮装身分捜査は、警視総監や道府県警察本部長の指揮の下、あらかじめその承認を受けた「実施計画書」に基づいて捜査を実施。同計画書には「仮装身分捜査を実施することが必要かつ相当であると認める事由」「実施所属・従事体制」「実施期間」等を記載するとされる。