離婚するカップルが減少傾向にある中、「熟年離婚」は高止まりの状態が続いている。長く一緒にいる夫婦が、なぜ熟年離婚してしまうのか。『結局、どうしたら伝わるのか?』(アスコム)を書いた脳科学者の西剛志さんは「長く一緒にいるから分かりあえているという『錯覚』がコミュニケーション不協和を生み出している」という――。
結婚指輪を外した手で離婚届を差し出している手元
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結婚年数が長くなるほど妻は夫への関心が薄れる

熟年離婚とは一般的に20年以上の同居期間のある夫婦の離婚を指すのですが、この熟年離婚をする人が多くなっています。全世帯での離婚数は減少傾向にあるなかで、熟年離婚だけが高止まりしているそうです。

【図表】離婚件数及び離婚率(人口千対)の年次推移
出典=厚生労働省「人口動態調査」より
【図表】同居期間別にみた離婚件数の年次推移
出典=厚生労働省「人口動態調査」より

ここで、ひとつ疑問がわいてきます。「長い時間をともに過ごすことは、お互いをわかりあうことにならないのか?」ということです。実は、その結論の参考になる研究結果があります。

それは「結婚年数が長くなるほど、女性は相手に対してプラスの態度が減る傾向にある。男性は結婚期間が長くなってもあまり変化がない傾向にある」という研究結果です。ちなみに、プラスの態度とは相手に共感したり、接触したいといった態度です。

つまり、結婚年数が長くなるにつれ妻は夫への共感が薄れ、夫への関心や興味がなくなってくるというのです。もちろんこれはあくまでも全体の傾向なので、個人差はあります。

「同じ毎日の繰り返し」こそが危険

こうした傾向をわかっていないまま、今日と同じ明日みたいな感覚でいると、ある日突然「離婚してください」と夫が妻からつきつけられることがあるのです。

これはいってみれば二人の間に認知のズレが起きているのに、そのことに気がつかず「コミュニケーションのれ合い状態」が続いてしまったのが原因です。

夫婦関係に限らず、職場でも、友人関係でも、同じようなことが起こりえます。長い付き合いは、いい関係につながることもありますが、馴れ合いになってしまうこともあるのです。

・言わなくてもわかっているはず
・ちゃんと伝えなくても理解してくれるはず

こうした感情は、危険です。

では、長い付き合いの相手とどうコミュニケーションをとればいいでしょうか? それは、ここまで出てきたことと同様に、お互いの認知のズレを減らすことです。

長い付き合いだと、すでにできあがっている関係性があります。いきなり初心にかえって出会った頃のようにお互いに気遣いをといっても、現実味がないですよね。