※本稿は、西剛志『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』(アスコム)の一部を再編集したものです。
なぜ謝罪をしても相手の怒りが消えないのか
仕事をしているとどうしても避けられないのが、謝罪をする機会です。
リーダーになれば、自分が直接やった失敗じゃなくても、謝らないといけない機会も出てきます。そんな誰の身にも起きうる謝罪ですが、意外に「正しい謝罪の方法」を習っていない人も多いんじゃないでしょうか。
ここでは脳科学的に正しい謝罪の方法を伝授します。
謝罪の方法を紹介するうえで、大切なことがあります。それは「怒りは2つの成分で成り立っている」と知ることです。
「攻撃性」と「不快感」です。
動物にも怒りがあります。縄張りに侵入されたときに、それを防御しようとして「怒り」が発生します。人間も同じです。自分が大切にしているテリトリー、ルール、価値観が侵害されると怒りが起きます。
この怒りには、「攻撃」をしたいという衝動(攻撃性)と、相手に対する「不快感」があります。普通に謝罪をした場合、この2つの怒りが両方ともなくなるわけではありません。謝ったときには、怒りの「攻撃性」は消えやすいのですが、「不快感」はなかなか消えないのです。
謝罪で重要なのは「不快感」を取り除くこと
わかりやすい例でいえば、パートナーが浮気をしたとき。浮気がバレて、相手から「ごめんなさい」と謝罪を受けたとします。これ以降、怒りの攻撃性は徐々に収まっていくのではないでしょうか。でも、不快感はなかなか消えないのではないでしょうか。
仕事で何かトラブルがあり、トラブルを起こした先から謝罪を受けたとします。
謝られることで、沸々とした怒りは静まっていくのだけれど、その後もなんだか相手に対してモヤモヤしたものが消えない。それは信頼感がなくなったこともあると思いますが、それだけではなく、何か不快感が残ったままになります。
そこで、単に謝るだけでなく、不快感も一緒に消し去るためのより相手に届きやすい謝罪の方法を紹介したいと思います。謝罪には技術があります。
謝罪の技術1 一人より複数で謝るほうがいい
その理由は、他人が援助をしている姿を見ると、自分も援助や寛大さを持ちやすくなるからです。
失敗した人が一人で謝るよりも、失敗した人を支援しているもう一人がいると、この人は失敗した人を支援しているように見えるため、ミラーニューロン効果(もらい泣きのように、相手と同じような感情やテンションになる効果)で謝罪を受けるほうも応援してあげようという気持ちになりやすくなるといわれています。