自分の考えを、相手にうまく伝えるにはどうしたらいいのか。脳科学者の西剛志さんは「言葉が正確に伝わるかどうかはイメージの解像度で決まる。解像度が低いと誤解が生まれてしまう」という――。

※本稿は、西剛志『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』(アスコム)の一部を再編集したものです。

髪にハサミを入れる美容師の手元
写真=iStock.com/eclipse_images
※写真はイメージです

「急ぎ」や「がんばる」は抽象的で伝わらない

「かっこいい感じにしてください!」

「この言葉をお客さんが言ったときは要注意なんです」美容師の知人からそんな話を聞いたことがあります。

相手とイメージしたものが違い、上手く伝わらない現象のことを脳科学では「認知のズレ」といいます。

「かっこいい」は、認知のズレを起こす言葉です。この言葉が出たときは、この人はそのお客さんと認知のズレがないよう、いろいろと質問しながらそのお客さんが考える「かっこいい感じ」を探っていくそうです。

仕事でも、認知のズレはしょっちゅう起こります。

「急ぎでお願いします」
「がんばってやります」
「すごい成果を出してください」

こういった抽象度の高い表現は、発している側と相手とのイメージにズレが生じる可能性大です。認知のズレが起きるのは「言葉のイメージ」がお互いに異なっているからです。

急ぎって、何分なのか?
がんばるって、どのくらいやることなのか?
すごいって、どのくらいすごいのか?

こうした抽象度の高い表現は、その人の持つ言葉のイメージによって大きく変わります。

急ぎを1時間ととる人もいれば、今日中と考える人もいます。人によっては今週中と考えるかもしれません。ほかにも、価値観の差、バイアス、脳タイプなど、さまざまな認知のズレを生む要因はあります。

認知のズレが大きいと、すりあわせる努力が必要です。自分が伝えたいイメージが相手に伝わるためには、言葉の解像度を上げることが大切です。言葉の解像度とは、相手がはっきりとイメージできる具体性の高さのことです。

伝わらない原因は「イメージの解像度」にある

「何度も話したけど、相手が理解してくれなくてうまく伝わらない」

仕事でよく聞く悩みです。なんで、何回伝えても、相手は理解してくれないのでしょうか? 理由は、相手のほうが「イメージできていない」からです。

イメージできないことを行動に移すのは難しい。だからうまくいかない。逆にいえば、相手のイメージをつくってあげることが、イコール伝わるということになります。イメージをつくることをよく「解像度を高める」といいますが、伝わらない場合は解像度が低い状態ということです。