いい人間関係を築くには、どんなことに気を付けたらいいのか。脳科学者の西剛志さんは「感謝を伝えるだけで、コミュニケーションは大きく改善される。脳の共感力がピークを迎える48歳以降こそ感謝の言葉が役に立つ」という――。

※本稿は、西剛志『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』(アスコム)の一部を再編集したものです。

子どもが画用紙にクレヨンで描いた「ありがとう」の文字
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

脳は「感謝」を伝えるのが苦手

「あなたは私がお願いしたことを忘れることもあるけど、いつも私の意見に耳を傾けてくれて感謝している。少しでも改善しようとしてくれてありがとう」

伝える際に、相手に「感謝の気持ち」を一緒に届けると、伝わり方が大きく変わります。「感謝の気持ちを伝える」ことはコミュニケーションをうまく生かせる大きなポイントですが、意外におろそかにされている行為でもあります。

「なんで感謝を伝えないのですか?」と聞くと、多くの人が同じ回答をしました。

「なんか、感謝を伝えると、相手に負けた気がする」
「なんか悔しい」

この気持ち、わかります。そして、脳科学的にみても仕方がないのです。相手を認めることが、実は脳は不得意だからです。

ネガティブな感情は共感力を低下させる

相手を認めるためには、共感力が大切です。しかし、私たちはネガティブな気持ちでいるとき、共感力が下がることが2018年のジュネーブ大学の研究でわかりました。

脳は自分の状態が悪いと、「まずは自分を守ろう」とするモードになります。自分がダメージを受けていると、脳は相手に共感している場合ではない状態になってしまうため、共感力が下がってしまうのです。

つまり、普段から人に対して不平不満や、イライラ、怒りを持っていると、共感力が持ちにくくなり、脳が相手を認めようとしなくなってしまいます。

恋人や夫婦の間でたくさんのイライラや不満が募っていると、相手を受け入れることがなかなか難しいのは、脳の特性です。共感力が下がれば、感謝を伝えることも難しくなります。

また、別の研究ではこんなこともわかっています。自分がネガティブな状態だと、相手が(ネガティブな表情ではなく)ただ無表情だっただけでも、「相手はネガティブな表情をしている」と認知してしまうそうです。

相手は普段通りのはずなのに、見ているだけで腹がたってくることがあるのはこういう脳の特性が影響していたのです。

共感力は48歳がピークです。これはハーバード大学の研究でわかっています。そこからだんだん共感力は下がっていきます。