職場でいい人間関係を作るにはどうしたらいいのか。脳科学者・西剛志さんの著書『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』(アスコム)から、上司と部下がすれ違う理由を紹介する――。
オフィスで立ち話をする3人のビジネスパーソン
写真=iStock.com/kazuma seki
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いつの時代も「無能な上司」がいる

いつの時代も、上司に対する不平や不満は生まれるものです。なぜ、上司のことを無能だと感じてしまうのでしょうか? 本当に上司は無能なのでしょうか?

実際には有能な上司も、無能な上司もいますよね。社内でそのポジションに上がっているのですから、仕事で実績を上げた、社内の立ち回りがうまいなど、何かしらの強みはあるはずです。でも、部下から見ると、上司を優秀だと思えない理由があります。

その大きな要因が「命令」です。

命令をする上司は、部下からは無能扱いされやすくなります。

命令はダメなコミュニケーション法なのです。

「え、自分は部下に命令なんてしてない」

そう思う上司もいるかもしれないですが、この「命令」は「これをするように言いつける」ということだけではありません。

たとえば、自分の意見を前面に押し出し、部下がNOを言えない雰囲気をつくる。たとえば、これまでのやり方にこだわり、ほかの人に有無を言わせない。

そんな上司がよく使っているのがBYAF法(あなたに任せる法)というメソッドです。このBYAF法ですが、効果は科学的にも証明されていて、世界でたくさんの論文が発表されている信頼性の高い方法です。

いい上司は“命令”を避ける

やり方は簡単です。自分の意見をいろいろ伝えます。そして、ポイントは最後のところです。「最後はあなたの判断に任せます」「最終的にはあなたの自由です」。そう伝えて終わるのです。

つまり、自分の意見を押し殺すわけではなく、ちゃんと伝えつつ、選択を相手に委ねる。これがうまくいく人のコミュニケーションです(BYAF法は、But You Are Freeを略したものです)。

繰り返しますが、この方法のポイントは最後の部分です。そこまであれこれと話をしたら、最後に「きみの選択に任せるよ」と、選択権を渡します。

選択権が自分にあると、それは「自分ごと」になりやすい。だから、自分で判断して行動に移しやすいのです。

このひと言を添えただけで、相手の行動の確率が2倍に上がります。

「うまくいく人」の多くはBYAF法を活用しています。

以前、ソフトバンクの孫正義さんの講演を聞いたことがあるんですが、孫さんもまさにBYAF法の達人でした。

これからの社会に対する危機感、変化などの話を熱く語ったあとに、「これからどんな行動をするかはあなたの選択次第です」という言葉で締めくくっていました。まるで映画のワンシーンの台詞のように。