※本稿は、飯山晄朗『科学的に裏付けられた教えるスキル』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
講演会で稲盛和夫氏が語ったこと
最近「コンパッション」という言葉を目にすることがあります。
社会生活で心身の健康を重視する「ウェルビーイング」の機運が高まっていますが、これと関係があるかもしれません。
コンパッションは、簡単に言うと「思いやり」と解釈してよいでしょう。「他者への思いやり」「誰かのために思いやりを送る」ということだという認識です。
この他者への思いやりによって幸福を感じることで、幸せホルモン(ドーパミン、セロトニン、オキシトシンなど)が脳幹から分泌されます。
京セラの創業者でJALを再生した稲盛和夫氏の講演を拝聴した際にこのようにお話しされていました。
「多くの経営者は、自分の都合のいいように判断をしてしまいがちです。利害関係のないときには正論を吐き、立派なことを言っている人が、いざ自分の損得が絡むと態度が一変してしまう。そんな人はリーダーとしての資質を欠いています」と。
ではどのような判断基準で考えればいいのでしょうか。
自分のことだけしか考えない人は、脳が燃え尽きやすくなる
もちろん法律や社会通念上の判断もありますが、稲盛氏もおっしゃられているのが「利他の心」、つまり「誰かのために」です。「誰かを喜ばせたい」という純粋な気持ちが人を動かすのでしょう。
アドラー心理学のアルフレッド・アドラーの言葉の中に、「人生におけるあらゆる失敗の原因は、自分のことしか考えていないことにある」というのがあります。
これは主に対人関係について述べたものですが、脳についても同じことが言えます。
「自分のことだけしか考えない人は、脳が燃え尽きやすくなる」
ということです。うまくいかないことが続くと、諦めやすくなります。自分のことだけしか考えていないから「まっ、いいか」「仕方ないね」となってしまいます。
また苦しいことがあると、そこから逃げてしまいます。「なんで自分がこんな目に遭わなければいけないんだ」「やってられない」とそこから逃げ出したくなります。
そこで、「自分のためより、誰かのために」という脳をつくります。
そのために「感謝」の心が必要なのです。