“相違”を埋めるには「質問」が効果的
「命令」はNGと先ほど解説しましたが、逆にある方法を用いることで、さらにコミュニケーションがスムーズになる方法があります。
それが「質問」です。
「相手の立場に立って考えましょう」
何度も言われてきたことがあるのではないでしょうか。
また、伝え方や話し方の本でも、「相手ベースで考えよう」「相手が何を知りたがっているか考えることが重要です」と書かれている本が多くあります。でも、そのたびに「相手の立場に立て、考えろ、と言うけれど、どうやればいいんだ! それを教えてくれよ!」と思ってしまう人も多いでしょう。
その手の本を読んだときにはなんとなく「なるほど」とわかった気になっても、いざ実践しようとなると、なかなかうまくいかない。
そこで、理解するための道具になるのが「質問」です。質問を通して相手を理解していきます。質問を活用して相手の頭の中を観察していくのです。
たとえば、意見の対立が起きてしまった場合。「私はこう思っている!」と自分の意見を相手に押し付けようとしてしまうことはありませんか。でも、この押し付けは脳の特性を考えるとNGです。自分の意見の押し付けは、相手の理解を生むことにはつながりません。むしろ反発を買う可能性が高く、マイナス効果です。
理由は、人間の脳にあります。脳は「快感」を感じたときに言葉を受け入れやすくなる。相手からの押し付けは快感を生みません。また脳は言われたことと逆のことをしようとする特性もあります。だから、マイナス効果なのです。
だから上司と部下はすれ違う
では、意見が対立したときはどうしたらいいか?
対立したときは相手の視点で語ることです。
「あなたはこう思っているということですか」というように、相手に質問します。そうすれば、対立ではなく「いい議論」に変換することができます。相手の視点の理解をしたうえで、価値観や感じ方など認知のズレをなくすために「質問」を使って相手とチューニングしていくのです。
ただし、注意があります。実際に、上司と部下の会話の例を見ながら解説していきましょう。
上司:「最近、この仕事はどう? うまく進んでる?」
部下:「うまくお客さんとやり取りができなくてストレスなんですよね」
上司:「そうか。きみはさ、まず言葉の使い方とか敬語から直していったほうがいいかも」
部下:「えっ敬語ですか」
後日、上司は、部下にマナー本をポンと手渡して、こう言いました。
上司:「とりあえず、これ読むことから始めてみたら?」
部下:「……」
こんなふうに、部下から仕事のストレスについての話があったとします。上司は最初に質問したものの、自分の感覚で「お客さんとのやり取りがうまくいかないのは部下の話し方に問題がある」と決めつけています。そして、その改善のために本を部下に渡してしまう。