「逆転できる」チーム・組織が、勝つ!
熱戦が繰り広げられた、今夏の甲子園。まさに100周年の記念大会にふさわしい大会だった。
接戦や劇的な逆転ゲームも目立った。
ちょっと大げさに聞こえるかもしれないが、「人として大事なこと」をたくさん学ばせてもらった気がする。チームという組織に関わるもののあるべき姿や、逆境にどう立ち向かうか、人生の教訓を改めて教えられた(具体例を文末にまとめた)。
東海大相模と仙台育英の決勝戦。
育英は最大4点差を序盤につけられたが、相模の150km/hの豪腕エースにひるむことなく6回には6-6の同点に追いついた。ファウルで数球粘ってからの同点打だった。甲子園の観衆は育英の応援団と同様に青と黄色のタオルを振りかざして球場が一体となっていた。育英の諦めない姿が観衆をそうさせたのだ。
45年ぶり2回目の優勝を果たした東海大相模も逆転劇を演じている。準々決勝の花咲徳栄(埼玉)戦。7回まで1点のリードを許していたが8回に追いつき、9回にサヨナラ勝ちした。門馬敬治監督は「徳栄戦が一番、苦しかった」と言っている。何でもいいから出塁するぞと粘って食らいついていけば何かが起きる。実際、相手のエラーを誘ったのだ。
地方大会でも「まさかの展開」は多かった。
怪物1年生として大活躍した清宮幸太郎選手の早稲田実業は、甲子園準決勝で敗退したが、今夏、もっとも苦戦したのは、西東京大会の決勝戦だったかもしれない。早実の和泉実監督は「あの0対5から逆転するなんて信じられなかったでしょ」と甲子園で報道陣に逆に問いかけることもあった。
対東海大菅生戦。7回終了時点で0-5。相手投手はプロ注目の逸材で、早実打線は沈黙を続けていた。どう考えても敗色濃厚だ。
ところが、である。
8回表に、早実は一挙8点を入れ、相手エースをマウンドから引きずり下ろした(試合は8-6で勝利)。
8回の早実の大逆転劇は、安打6本、四球5。清宮も7点目となるタイムリーヒットを放った。驚くのは、早実が8点もの大量点を取った攻撃時間が相手投手交代の時間を含め、20分足らずだったことだ。この20分間に菅生の選手は、天国から地獄へ突き落とされたような心境だったに違いない。
野球に限らず、またスポーツに限らず、「ドラマ」というものは、実はあっという間に起きるものなのかもしれない。