高校野球の地方大会が佳境を迎えている。大逆転あり、ノーシードの快進撃あり、優勝候補の敗退あり。そして甲子園の新アイドルとなりそうな早稲田実業・清宮幸太郎の出現もある。さて、監督はどうやって選手の力を引き出すか。選手たちの気持ちの高め方は。今夏、各地で繰り広げられた「熱闘」の中から、ビジネスに役立つエピソードを数回にわたって紹介していこう。
甲子園一番乗り! 沖縄・興南監督の言葉はビジネスに効く
この夏、全国で一番早く、甲子園の出場を決めたのは沖縄の興南高校だった。今年で10回目、5年前に島袋洋奨投手(現ソフトバンク)を擁して史上6校目の春夏連覇を成し遂げて以来の出場になる。
「この子たちを甲子園に連れていけなかったら監督の責任」
我喜屋優監督(65歳・興南高校長兼理事長)が優勝会見で言うほど、力のある選手が揃っていた。8月6日から始まる夏の甲子園で再び新たな歴史を作るかもしれない。
「野球は改革。古いものは捨てる」
今年のチームは過去のチームと比べてどうかと問われ、こう答えたそうだ。かつての春夏連覇のチームとの比較なんて意味がない、というのだ。ここに我喜屋の哲学が詰まっているように思う。
2010年、春のセンバツ大会で我喜屋はチームを優勝に導いた。
しかし、お祝いムードに浮かれて足元がおろそかになったら、そこで進歩は止まる。まだ優勝の興奮冷めやらぬ決勝翌日の大阪の宿舎近くの公園。桜の舞うなかで、我喜屋は選手に話した。
「甲子園優勝という花を咲かせたのは事実だ。花を咲かせたのは枝があるから。枝を支えているのは幹である。その全てを支えているのは目に見えない根っこだよ。甲子園優勝が花ならば普段の生活態度や練習が根っこだ。花はいつか散る。でも根っこがちゃんと育っていればまた美しい花が咲く」
夏へのスタートは桜吹雪のなか、ゼロから始まった。
ビジネスにおける花とはヒット商品や大型契約。根っことはさしずめ、地道な研究、リサーチ、営業やあいさつ回りなどか。根っこにはいい水、葉にはいい光、枝にはいい風を与えよう。きっと企業のマネジメント層やリーダーは我喜屋の考えに大いに共鳴するのではないか。