ビジネスマンが学ぶべき「超一流」の作法

現在、男子テニス世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)。

そのジョコビッチ自身が書いた『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館刊・筆者翻訳)は3月下旬に発売するや、たちまち5刷を数えベストセラーとなっている。

杉山愛(すぎやま・あい)
日本人選手として初めてWTAダブルス世界ランキング1位になるなど、シングルス・ダブルスともに実績を残したオールラウンドプレーヤー。09年に現役引退後はテニス普及活動のほか、テニス中継の解説なども務める。

かつて世界の頂点の壁をどうしても崩せなかった男が、ほんの少し食事を見直し、別人に変身した(2週間で5kgやせた)ことで、世界王者の座を手中にした。今まさに無敵で現役バリバリの世界王者がその「最高企業秘密」を明かしたのだ。面白くないはずがない。

そんな本書を訳した私のところに「プレジデントオンライン」から、「超一流のジョコビッチと一流(超一流にもう一歩)の錦織圭の差を解説してほしい」という依頼が届いた。

本書の巻末には、ジョコビッチや錦織圭に関して元プロテニス選手の杉山愛氏にインタビューしたものを載せているが、今回、両者の実力差を聞くべく、改めてインタビューをお願いした。(以下文中敬称略:ランキング順位や勝敗数などは4月下旬の取材時点のもの)

▼杉山愛が全仏オープンのジョコビッチ×錦織を語る
――それにしてもジョコビッチの力は圧倒的ですね。先日の全豪オープンでも、全米オープンでも優勝しました。ゲーム後半になればなるほど強くなる印象です。

【杉山】そこがトップの共通点ですね。ここという場面でどれだけギアをあげられるのかという話になるわけですが、あの次元になるとストロークの質などに圧倒的な差があるはずがありませんよね。でも、トップは互角に戦っているように見えてもここという場面を見極めて、確実に取ることができる。No.1のジョコビッチはそこが際立っているといえるでしょう。一旦相手にいった流れを引き戻すのは簡単ではないのですが、会場の一体感を作り出す力、流れを自分に引き寄せる力がジョコビッチは抜きんでていますね。

――緊張感あふれる場面でこそ、実力を発揮する。逆風の中でも「流れを自分に引き寄せる力」がある――。一般の仕事の世界でも優秀な人ほどそういう傾向がありますね。さて、今のところ、4大大会でジョコビッチが唯一勝ってないのが、現在開催中の全仏です。ジョコビッチが全仏で優勝するには何を足せばいいのでしょう?

【杉山】もう技術や精神面など全てにおいて優勝してもおかしくないものを持っていますし、今年は特にクレーコートに強い「クレーキング」といわれるナダルが不調ですからね。ですから、現時点でジョコビッチが優勝最有力というのは間違いないでしょう。何かが足りないとか、足さなければならないというのはないと思います。

――ナダルがこれだけ不調だとすると、2番手は錦織ですか?

【杉山】難しいところですね。錦織選手は今年好調ですし、実力をつけてきているのも間違いありません。ただ、過去の大会でも不調だったナダルが立て直して優勝したという例もありましたから、不調とはいえ、2番手はやはりナダルだと思います。ここまでナダルの調子が悪いシーズンは初めてですけれども……。そして3番手は、錦織選手というのが順当な見方ではないでしょうか。