小麦製品を食べてはいけない?

錦織圭が敗れた。

全仏オープンテニス準々決勝の対ツォンガ戦。初のグランドスラム制覇も十分ありうる、との下馬評で、このツォンガ戦でも圧倒的不利から見事盛り返したが、惜しくも念願叶わなかった。

なぜ、あと一歩のところで勝てないのか?

その一因は「小麦」かもしれない。技術面やメンタル面などにもわずかな課題はあるのだろうが、食事管理こそが実力伯仲のランキング上位の選手を蹴落とす最後の武器となるのではないか。

読めば肉体改造のみならず、人生も好転するという実践的ダイエット理論本『ジョコビッチの生まれ変わる食事 あなたの人生を激変させる14日間プログラム』(三五館)はベストセラー。

現在、テニスの世界王者(ランキング1位)はジョコビッチだ。しかし、彼が以前は、錦織と同じように「あと一歩」で上位選手に敗北していたことは、あまり知られていない。

転機となったのは、2010年の全豪オープン準決勝。今回の錦織と同じツォンガ戦だった。試合を優位に進めながらも途中から原因不明の腹痛と吐き気に襲われて逆転負けを喫した。たまたま、テレビで試合を見ていたセルビア人の栄養学者が指導に乗り出したことで、ジョコビッチの人生は大きく変わる。

わずか2週間で5kgやせ、1年半後の2011年ウィンブルドンで優勝。一気に世界1位に上り詰めた。恐るべき即効性ではないか。

その食事管理のメソッドをジョコビッチ自身が執筆した、その名も『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館/筆者訳)がベストセラーとなっているが、いったい、どんな管理法なのか。実は、その中に錦織の「あと一歩」不足の要因が隠されていた。

ジョコビッチが指導を仰ぎ、今も実践していること。それは、小麦の入った食事をしないことだ。小麦にはグルテンというタンパク質が多く含まれている。西洋人にとって、パン、パスタ、ピザなど小麦製品はいわば主食。だが、グルテンを含むこれら小麦製品が、アスリートの体に少なからずダメージを与えている、というのが先の栄養学者の考えだった。似た理論を唱える学者は、近年、日本を含め増えてきている。