グルテンカットは糖質制限と違う
私は今回、本の翻訳をするだけでなく、実際にジョコビッチ本の食事管理法を試し、その効力を実体験した。
ジムで私はプロアスリート以上のトレーニングを週に7日しているにもかかわらず、ここ最近4kgも太っていた。ところが、パンやパスタ、うどんやクッキーなど「小麦のかたまり」はもちろん、原材料に小麦が含まれていることがある「ドレッシング」「ふりかけ」「(たまりではない)醤油」「(小麦入り)キムチ」なども食べるのをやめると、たちまち3.5kgの減量に成功した。
私の太めの友人は1カ月足らずでウエストを13cm落とした。本の読者のなかには花粉症が完治した人もいるし、早朝に起床するのが苦ではなくなったという人もいる。
前述したようにジョコビッチ本の効果は、錦織らアスリートだけでなく、一般人も十分期待できる。翻訳兼体験者として声を大にして言いたいのは、小麦を減らすだけでも、仕事の効率が著しく向上するということだ。
ただし、グルテンカットの話をすると「糖質カット」と混同する人がいるので注意したい。糖質とは、主に米やパン、麺などに含まれるでんぷんや、果物に含まれる果糖、砂糖に含まれるしょ糖などだ。「低炭水化物ダイエット」として近頃は実践する人も少なくないが、グルテンカットはあくまで小麦のみ。だから、ジョコビッチはドライフルーツなどもしばしば口にしている。そうした糖質を適度に摂取しないと、ハードワークのテニス選手はパワー不足となり、足の筋肉などが攣るというアクシデントを招きかねない。
とはいえ、「ジョコビッチが体重を5kg落とした」と聞いて、「それはアスリートだからできたことだ。自分にそんなきつい運動はできない」と感じる向きもいるだろう。
だが、よく考えれば、世界中でハードな練習と試合をしている選手が、もともと肥満であったとは考えられない。つまり、「5kg減」は、極限まで鍛え、削ぎ落とす贅肉などほとんどなかったはずのジョコビッチですらできたということだ。
余分な脂肪分に悩む人の多い一般人ならば、5kg減は実はそれほどハードルが高いわけではないとも言える。今回の「錦織惜敗」を受け、ジョコビッチ本実践者としては、約3週間後にウインブルドン(全英)を控えた錦織本人に、また本格的な夏到来を目前にダイエットしたいと思いつつ何もしていない読者の皆さんに、より強くグルテンフリーの食生活を推奨したくなったのである。何しろ2週間あれば、体も脳も変えられることをジョコビッチが証明しているのだから。