小麦絶ちで「1000分の5秒」動きが速く

ジョコビッチは自著で小麦を摂取すると「脳に霧がかかっている」状態になる、と表現している。翻訳担当として私がもっとも興味・関心を覚えたのは、ジョコビッチ自身が小麦を絶ち、科学的な栄養摂取(詳細は本書参照)を心がけたことで、初動が速くなったと自覚していることだ。

5kgやせて体がよりキレたことに加え、脳の働き(反応)もよくなった。1000分の5秒~10秒程度なのだが、高速のラリーが続くテニスでは、それが優劣を決めることになる。そうやってテニスの絶対王者はでき上がったのだ。

錦織にも、ぜひ小麦絶ちを実践してほしい。そうすれば、グランドスラムにも手が届くと思う。

ただ、ご存知の通り、錦織圭の所属は日清食品である。完全に小麦を絶つのは「大人の事情」で不可能ではないか、と考える向きもいるだろう。確かに、インスタント麺は食文化的にも存在意義があり、災害時などに緊急支援物資として被災地へ送るなど社会への貢献度も大きい。錦織に同社と縁を切れなどと言うつもりも毛頭ない。

それでも、錦織がジョコビッチのような超一流プレーヤーを目指すなら、今一度「食事」を見直すべきではないだろうか。

それに、世の中にはグルテンフリーの食べ物が徐々に増えているのだから、日清食品には一刻も早い「グルテンフリーカップヌードル」の開発を期待したい。

実はジョコビッチは栄養学者の指導を仰いだ時、血液検査で「グルテン及び乳製品の不耐症」という診断を受け、これに強く反発した。実家がピザ屋だったからだ。だが、その後、ジョコビッチ一家は地元セルビアでグルテンフリーのレストランを開業し、盛況だという。