掃除をすると、細かいことに気づける

人生に花を咲かせる根っこの作り方3:魂知和(こんちわ)

さて、チームとして。

興南野球部創部の約50年前、当時の野球部監督が使い始めたモットーがある。

「魂知和」

「こんちわ」と読む。我喜屋が静岡や北海道にいる間に忘れ去られていた言葉だったという。その言葉を母校の監督に復帰するにあたって、部員の心を一つにするために復活させた。

●何事にも信念を持って取り組む「魂」。
●たくさんの知恵や知識を身に着ける「知」。
●仲間の信頼や協力を得る「和」。

興南高校の野球部員は全員がお客さんなどに「こんちわ」と元気よく言葉を投げかける。

「大会前から勝負は決まっている、準備がいかに大切か。投手の左右、球種などミックスして打撃練習もしている」。これは監督の仕事の一つ。言い換えれば、掃除や整理整頓は次への準備をしておくことだ。部屋の掃除はグランド整備と同じなのだ。綺麗なデスクでなければ資料は広げられない。綺麗な会議室でないと会話は弾まない。

人生に花を咲かせる根っこの作り方4:掃除・整理整頓をする

興南高校の野球部員は100人を超す。レギュラーやベンチ入りメンバーに入れるのはごくわずかだ。だが、我喜屋は、一軍だとか甲子園メンバーだとか目先のことを目指すなら興南高校の野球部に在籍する意味はない、と言っている。

優勝したら嬉しいことだが、それは一瞬の輝きでしかない。

背番号はもらっていないけれど、2年半の部活動で何を学んだか。それを次のステージでどう活かせるかの方が大事。野球の試合は9回で、その日で終わるが人生のスコアボードは一生続く。3年間で花が咲かなくとも、これからの長い人生で花を咲かせればいい。野球部はそのための根っこ作りの場なのである。

高校野球部監督になって、生徒に取り組ませたのは、

「早寝早起き」
「食事は残さない」
「大きな声であいさつする」
「整理整頓」
「自分の意見を自分の言葉で伝える」

ということだったそうだ。常識的な礼節というべきことで、些細なことばかりだが、案外、実行できないことだ。高校球児に限らず、ビジネスマンも……。

久しぶりに故郷に戻って母校を指導することになって、我喜屋は寮の扉を開ける。野球をやる以前の問題だった。部屋は汚れ、生徒は夜更かし。朝寝坊は日常で朝食も摂らない。好き嫌いも目立つ。しかしこういう小さな約束を守れず、おろそかにするような者は技術があってもゲームに出さなかったそうだ。それが我喜屋の信念だったのだ。