結果ですべてが決まる。判断される──。
厳しい勝負の世界で生きている一流のアスリートたちの言葉には真実のリアリティがにじみ出ている。
「何で他人がオレの進む道を決めんねん。自分の道は自分で決める」(本田圭佑)(時事通信フォト=写真)

チャンピオンやトップアスリートのコメントが、なぜ人の心を打つかといえば、「普通の人とは考え方が違う」ことを如実に思い知らされるからだ。彼らは類い稀なる才能を持つだけでなく、努力や鍛錬を積み重ねることがベースにあることを、彼らの言葉を通して知っていただきたい。その上に創造力や直観力といったひらめきを発することができるからこそ、ほかとは違う存在になりえたわけだ。

さらに、トップアスリートは自分の仕事にプライドを持っているため、自説を曲げず、自分の決めたことを貫徹する人が多い。本田圭佑選手も、サッカーという職業を通し、自分のポジションで、自分の個性を主張する姿勢は、ほかのアスリートより格段に厳しいものがある。これはすごいことだ。

彼はたとえ監督と意見が食い違っても絶対に屈しない。監督が理解してくれるまで主張し続ける。ただし、単なる“ケンカ”をするわけではない。自分の考えをさらけ出すことによって、監督の考えをもさらけ出させ、互いが「オレはこういう考え方をしているんだ」ということをぶつけ合う方向へと持っていくのである。

もし、これが行動を伴わない発言であれば、単なる“戯れ言”で終わってしまう。しかし本田選手の場合、「チームを勝利に導くために、与えられたポジションで、自分の仕事を通して頑張っている」姿勢がリーダーに響くから、コミュニケーションが成立するわけだ。

逆に、本田選手のように、強烈に主張をする部下を抱えたリーダーは、どのように相対すればいいのだろうか。「厄介者」として追い払うよりは、言っただけの成果を挙げてもらったほうがいい。つまり、本田選手タイプの部下の意見を受け入れるべきかどうかのチェックポイントは、「実際に成果を挙げているかどうか」――ただ、この一点につきるのだ。

ドシャームという心理学者は、人間にはチェスにおける「コマ」となるタイプと、「指し手」となるタイプがいると分類している。従来の日本企業においては、指し手の指示通り忠実に動くコマ型人間が重宝されてきた側面がある。

しかし、世界中の企業を相手にしなければならない今、コマ型人間で構成された組織は立ちゆかなくなる。日本の優等生は、上司に言われるがまま忠実に仕事を遂行する傾向が強い。だが、成果が挙がらなければ誰が責任を取ることになるのか。それは本人であって上司ではない。そのことをしっかりと心に留めておくことが大事だ。