※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
30代女性が高収入の仕事を辞めたがるワケ
私のお客さまは働く女性が8割を占めます。事務所所在地が都心ということもあり、平均的な女性よりも年収が高く、金融・コンサルティング・医療など、専門的なスキルを活かして活躍されている方が多いです。……が、特に今、30代女性のみなさんが口々に「早く辞めたい」と話し、相談にやってきます。彼女たちに一体、何が起きているのでしょうか。
矯正専門のフリーランス歯科医師として働く大伴文枝さん(仮名/38歳)。複数の歯科医院と提携して病院から病院へと飛び回るような仕事のスタイルです。コロナ禍以降、マスクで口元が隠れるこの時期を好機と捉えて矯正を始める人が増えたそうで、仕事はひっきりなし。
月収200万円を超える月も少なくないですが、ハードワークがこたえるようで、会うたびに口をついて出るのは「早く辞めたい」。他にも皮膚科、産婦人科、外科など、私の元にはさまざまな科の女医の方がいらっしゃいますが、働き盛りの年代の方はやはり皆さん、しんどさを口にしているのです。
お金を使う時間がないので貯蓄は増えるが
金融業界で広報をしている中川順子さん(仮名/34歳)の帰宅時間は毎日22時過ぎ。年収800万円の一人暮らしなので生活に余裕はありますが、自分の時間はまったくありません。激務で生理不順が続き、心身ともに厳しい状態にもかかわらずリフレッシュの時間も捻出できないため、ネットショッピングで洋服を買ったりスイーツの取り寄せをしたりしてなんとかストレス発散をしているといいます。
彼女のお金の流れを見ていても、稼いだ額に対して支出が本当に少ない。使う時間もないので貯金は順調にできていますが、「こんな生活じゃなんのために働いているのかわからないですよ」と、蓄えた1000万円という数字も彼女にはむなしく映るようでした。
そんな中川さんと大伴さんが「早期退職」、“FIRE”の相談をしてきたのは、今年になってからです。