離婚を機に生活設計が大きく狂ってしまう女性は少なくない。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「妻や母として家族のために尽くすのは立派なことですが、自分自身のキャリアや人脈、お金を育てておくことも重要です」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

暗い家の廊下の床に座っている女性
写真=iStock.com/chameleonseye
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息子2人を医学部に進学させた母親に何が起こったか

収入面や社会的地位の高さから「医師」は憧れの仕事であり、昔から結婚相談所でも人気の職業だといいます。海老沢楓さん(62歳/仮名)は大学卒業後、医者一族の息子と結婚。開業医の妻として子育てに奮闘し、見事2人の息子も医師となりました。しかし、いま彼女自身は独り身で、生活保護を受けることになりそうな状況です。彼女に一体何があったのでしょうか。

楓さんは大学のサークルで後に夫となる海老沢智也さん(仮名)と出会い、交際に発展。先祖代々医者の家系で、実家は開業医。親戚も医療関係者ばかりという智也さんは、いわゆる“ボンボン”でした。サラリーマン家庭で育った楓さんは、資産家でやんごとなき家柄の海老沢さんに「憧れた」と言います。実際、海老沢さんは学内でも人気だったそうで、そんな彼と交際している自分を誇らしく感じたそうです。

元夫と交際中から感じていた“医者の家系”のプレッシャー

一方、智也さんからは交際中から度々、「自分の子どもも必ず医者にしたい」「妻には家庭を守ってほしい」と聞かされたと言います。「彼と一緒になれたら一生、生活に困ることはないだろう。でも、“医者の家系”というプレッシャーとプライドを感じた」――。楓さんが大学時代に感じた“海老沢家”の重圧は、結婚後に現実のものとなります。

楓さんはメーカーの事務職を3年で退職し、智也さんと結婚。彼からは生活費として毎月30万円をぽんっと手渡され、「足りなかったらいつでも言って」と言われました。住居としてあてがわれたのは、都内一等地の高級マンション。そこは義父が所有する不動産でした。家計や資産は夫が管理していたため、いったいこの家にどれほどの経済力があるのか、妻である楓さんにはまったくわからなかったと言います。