ねんきん定期便の「これまでの保険料納付額」には、個人負担分のみが記載されている。会社負担分の記載がないのはなぜか。新著『バカと無知』が話題の作家・橘玲さんは「それは、厚生年金が支払い損であることがバレてしまうからだ。この会社負担分がどこに回されるかというと、国民年金(基礎年金)の赤字の補塡だ」という──。
2065年には現役世代1.3人で高齢者1人を支える…
岸田政権で検討されている相次ぐ負担増への反発から、SNSでは《#自民党に殺される》がトレンド入りしたという。そこでいま、年金制度になにが起きているのかをまとめてみよう。
話の前提として、人類史上未曾有の超高齢社会になった日本では、制度を支える現役世代の数がますます減り、「受益者」である高齢者の人数が増えていく。
「現役世代(20~64歳)何人で高齢者(65歳以上)を支えるか」では、1950年には12.1人で1人の高齢者の負担を肩代わりしていたのに、2015年は2.3人で1人、2065年には1.3人で1人へと状況は急速に悪化していく(「令和2年版高齢社会白書」)。
戦争や内乱、疫病の蔓延がないかぎり人口動態はほぼ変わらないので、これは予測ではなく「確実にやってくる未来」だ。
コロナ禍で「ごまかせなくなった」
社会保険制度を破綻させず、「サスティナブル(持続可能)」なものにするためには、原理的に2つの方法しかない。「収入を増やす」と「支出を減らす」だ。
政府・厚労省はこれまでいろいろとごまかしながら、少しずつこれを進めてきたが、コロナ禍以降、ほころびを取り繕えなくなり、いまやなりふり構わなくなってきた。
それが、《#自民党に殺される》という反発の背景にあることをまずは確認しておこう。