サラリーマンは年金の奴隷

サラリーマンが加入する厚生年金は、とんでもない「ウソ」によって成り立っている。といってもこれは「陰謀論」の類いではなく、年1回送られてくる「ねんきん定期便」を見れば誰でもわかる。

そこには、「これまでの保険料納付額」と「これまでの加入実績に応じた年金額」の欄があり、それを比較すると、納付総額を大きく超える年金が受け取れるように思える。だがこれは、あなたが国に収めた年金保険料のうち、個人負担分しか記載されていないからだ。

社会保険料の半額は、会社が肩代わりして支払っている。本来であれば、個人負担分と会社負担分を加えた倍の額が、社会保険料の納付総額として記載されるべきだ。

サラリーマンの年金保険料は半分「詐取」される

ではなぜ、そうしないのか。いうまでもなく、厚生年金が支払い損であることがバレてしまうからだ。

これを簡単にいうと、サラリーマンが収めた年金保険料のうち、およそ半分が国によって「詐取」されている。そのお金がどこに回されるかというと、国民年金(基礎年金)の赤字の補塡ほてんだ。

こうした仕組みがわかると、厚労省がなぜ厚生年金の適用拡大に必死になっているか理解できる。

これは一般に、「パートなど短時間労働者が国民年金よりも多い年金を受け取れるようになる」と説明されるが、それにともなって保険料の会社負担が増えることはなぜかほとんど言及されない。

経営側からすれば、社会保険料は人件費の一部だ。パートが厚生年金に加入すると、会社負担が増えた分だけ人件費予算は減る。この単純な理屈によって、厚生年金の適用拡大は、その会社の(パートではない者を含む)社員全員の賃金を抑制する大きな要因になるだろう。

会社負担が増え、全員の給料は下がる

国からすれば、厚生年金は会社が保険料を取り立ててくれるおいしい制度だ。それに加えて、消費税の増税は政治的にきわめて困難だが、社会保険料の料率は国会での審議を経ずに厚労省の一存で決めることができる。

こうして社会保険料の負担が年々重くなり、会社が賃上げしても社員の手取りは逆に減っていく事態になった。

とはいえ、社会保険料の料率をいくらでも上げられるわけではない。そこで目をつけたのが、厚生年金をパートにまで拡大して保険料収入を増やすことだ。

ほとんどのサラリーマンは、厚生年金の適用拡大をひとごと(あるいはよいこと)のように思っているだろうが、それは現役世代を犠牲にして、会社の利益を高齢者の年金に「流用」する巧妙な仕掛けだ。

これによってさらに会社負担が増え、全員の給料が下がる(上がりにくくなる)ことをちゃんと説明しなければ、公正な報道とはいえないだろう。