FIREを考える前に知っておきたい現実とは

30代で早期退職を望む方に私がお話しするのは、FIRE後の「お金」と「やりたいこと」についてです。

まず、お金。たとえば毎月25万円の生活費を資産から捻出しようとする場合、7500万円の元手を利回り4%で運用し続けなくてはいけない計算になります。年収800万で現在34歳の中川さんが「45歳までにFIREしたい」となった場合、仮にリタイア後の生活費を25万円とすると、45歳までに7500万円が必要なので、若い方にとってかなりむずかしい計画であることは間違いありません。

加えて会社員の方が早期退職した場合、厚生年金の加入期間も短くなるため、将来受け取れる年金額も減少します。また、世界経済は良い時もあれば、悪い時もあるので、常に4%で運用し続けられるとは限りません。

そもそも25万円の生活費で満足する生活が送れるかどうか、という点もこれまでの生活水準と照らして考える必要があるでしょう。

ヨガインストラクターとして独立した30代女性の誤算

知人で、30代の時に早期退職してヨガインストラクターに転身した女性がいます。大手デベロッパーに勤務されていた方で、当時年収700万円稼いでいましたが、パワハラが横行する会社員生活に疲弊し、退職。昔から好きだったヨガを仕事にしたのです……が、年収は一気に500万円ダウン。

自然の中でヨガのポーズをとる女性
写真=iStock.com/AscentXmedia
※写真はイメージです

これまで月数回買い物に行っていた高級スーパーや大好きなオーガニックコーヒーも諦めなくてはいけなくなり、精神的に不安定になりました。自分の望むライフスタイルを目指して退職したはずが、これまでの生活水準との乖離かいりが激しすぎて理想の生活からは程遠いものになってしまったのです。

結局、知人はヨガインストラクターだけでは生活が立ち行かなくなり、現在は別の業界で再就職。副業というかたちでインストラクター業を続けながら、400万円ほどの年収をキープしています。つまり、自分の望む生活を維持するためには最低毎月いくら必要かをしっかり見定める必要があるということなのです。