材料のレシピも違うところから、同じゴールを目指す

ここ数年のハイボールブームに加え、NHK朝の連ドラ「マッサン」の放送もあり、酒類全体の消費量が落ち込むなか、ウイスキー消費は好転している。

しかし、ウイスキーはつくってすぐそのまま出荷できる酒ではない。完成させるには、熟成させた原酒を何種類もブレンドするわけだが、原酒は使っただけ減っていくので、なくなればその都度、また別の原酒を利用した新しいレシピをつくる必要がある。

ドラマの中でマッサンこと竹鶴政孝氏が行っていたこのブレンドという作業を、現在では、ニッカウヰスキーの4人のブレンダーたちが行っている。

ニッカウヰスキー柏工場。余市・宮城峡蒸溜所などでつくられた酒を製品化し、ここから全国へ出荷。ブレンダーは通常ここで研究している。

ブレンダーとは、原酒を混ぜて製品を完成させる、ウイスキーづくりのアンカーである。複雑な味と香りの個性を売りにするウイスキーの製造にあたって、数値化が難しい味、香りを客観的に判断して、共有しなければならない。と、言うのはたやすいが、味や香りを共有することは、非常に難しい。しかし、この共有がなければ、無限にある原酒の組み合わせから、安定した商品を完成させることはできない。

このために、ブレンダー同士が行っている意思疎通の図り方、コミュニケーションの取り方のポイントは大きくわけて3つある。まず、味の表現など、相手に伝えにくい定性的なものの表現方法。2つ目は食い違う意見の調整法。最後に、違う条件下で常に及第点の仕事をする方法だ。これらのポイントはビジネスマン同士のコミュニケーションにおいても参考になる。ウイスキーのつくり方に沿って、順に紹介しよう。