チェックテストの結果でクビにならないか

この12月から、従業員50人以上の職場で年1回、ストレスチェックテストを行うことが義務化された。これはどんなものなのか。導入することで、どんな影響があるのか。日本ストレスチェック協会代表理事であり、自身も産業医として多くのクライアント企業を抱える武神健之医師に聞いてみた。

武神健之氏(医学博士、産業医)

「ストレスチェックテストとは簡単にいうと、厚労省が用意した57問の質問等に答えることで、社員自身が自分の心の健康状態がどうなっているかを調べる制度です。テストの結果、ストレスが高いと判断された人に医師との面接指導を勧めることで、うつ病などのメンタル不調者を減らすことが期待されています」

しかしストレスというのは、基本的に個人の心の内側の問題である。テストに正直に答えるのも、それを会社に提出するのも抵抗があるという人は少なくないだろう。さらに邪推すれば、テスト結果を社内で回し読みされたり、上司に「こいつは精神力が弱いから大事な仕事は任せられない」と思われて出世できなくなる可能性もなくはない。

だが武神医師は「正直に答えてもらって大丈夫ですよ」と言う。

「ある人がテストを受けたとしますよね。その結果を知ることができる人は世の中に3人しかいません。1人は受けた本人。もう1人はストレスチェック制度の実施者である医師や保健師。もう1人は実施事務従事者。これは社内の人事担当者などです」

つまり本人以外は医療関係者と人事担当者の2人しか結果を見ることはできない。しかも実施事務従事者が知ることができる情報は限定的で、社員の誰がテストを受けたか、誰がストレスが高いかということだけ。「どんなストレスなのか」まではわからない。