サントリーの危機感とは

サントリーホールディングス(HD)は、グループの基礎研究機能の核となる研究拠点「サントリー ワールド リサーチセンター」を京都府内に開設した。グローバルで打ち勝つための新たな商品開発につながるシーズづくりを強化する狙いだ。

新研究拠点「サントリー ワールド リサーチセンター」が開設された。

新浪剛史社長は「今後、サントリーグループの発展にとってR&D(研究開発)が一番重要な経営課題だ。ようやくグローバルスタンダードのR&Dセンター(研究施設)ができた。今後は研究分野にもリソースを配分したい」と力を込める。

研究拠点の「サントリー ワールド リサーチセンター」は約100億円を投じ、京都府精華町の「けいはんな学研都市」に設立した。地上4階建て、延べ約2万3000平方メートル。山崎蒸留所(大阪府島本町)周辺に分散していたグループ各社の研究所の機能を集約し、最新の分析機器なども導入しながら、計400人の研究者を1カ所に集める。

醸造用の酵母やサプリメントの素材などの基礎研究をするグループ各社の研究者らが相互に交流しやすくなるように、会社別の縦割りではなく、分野別に研究できる「共用実験室」を配置するなどの知恵が集まる工夫を凝らす。また研究者をはじめ全従業員の固定席を廃止した上で、100%フリーアドレスのオフィスとし、センター内の従業員同士の交流を促すという。

「このリサーチセンターはサントリーの危機感の表れ」とある研究員は語る。

「これまで会社ごとに研究室があり、重複した研究を行っていたが、それを機能別に分けた。同じサントリーの一員でありながら、顔を合わせたことがない研究者が多い。雑談をすること、一緒に考えることから新しいものを生み出さなければならない」

辻村英雄・サントリーHD専務もこう言う。

「将来のいろいろな価値を生み出すシーズをいま作っておかないと10年先、20年先のわが社はない」