サントリーホールディングス(HD)は、事業発展の基礎となったウイスキーなど蒸留酒事業で、世界企業を目指す大勝負に打って出た。バーボンウイスキーで世界トップブランド「ジムビーム」を持つ米蒸留酒最大手のビーム社(イリノイ州)を、総額160億ドル(1兆6500億円)で買収し、売上高で世界第10位から一気に3位の蒸留酒メーカーに浮上する。サントリーHDにとっては、悲願の世界企業への道筋を付ける大型買収だが、ビーム社の買収には三菱東京UFJ銀行から約1兆4000億円を借り入れることから、実質無借金経営だったサントリーHDの財務悪化は避けられず、リスク覚悟の決断でもある。
サントリーHDが1月13日に発表した合意内容は、ビーム社の全発行済み株式を1株83.5ドルで買い取り、6月までにサントリーHDが米国に設立した特別目的会社がビーム社を合併する。買収後もビーム社の現経営陣はそのまま。買い取り価格は過去3カ月のビーム社株価の平均に24%上乗せしており、「高値掴み」との指摘もある。が、サントリーHDは「将来の相乗効果などを考えれば、買収金額は妥当」と判断している。
世界の蒸留酒市場はウイスキーブランドで「ジョニー・ウォーカー」を擁する英ディアジオや、「シーバスリーガル」を持つ仏ペルノ・リカールなど大手の寡占化が進み、サントリーHDが世界で戦ううえで大型買収が不可欠だった。この点、ビーム社はジムビームに加え、コニャックやテキーラなどの品揃えが豊富で、世界市場で高いブランド力を持つ。「山崎」「響」などサントリーHDが得意とする高級ウイスキーとは商品面で競合しないうえ、ビーム社が世界で展開する販路が活用できる。サントリーHDの佐治信忠社長は、ビーム社の買収で「グローバルでさらに大きく成長できることを確信する」とし、蒸留酒事業のグローバル化を一段と加速する意向だ。
人口減少で縮む国内市場に安住していては、成長戦略は描けない。昨年2月、2年以内の退任意向を示した佐治社長にとって今回の買収は、飲料子会社、サントリー食品インターナショナルの株式上場や、矢継ぎ早の海外企業の買収と併せ、世界企業への総仕上げとなる。