不思議な飲み物が流行している。「ノンアルコールカクテル」という。
アルコールの入っていないビール味の飲料をノンアルコールビールと呼び、ビール好きが車の運転をするときや昼の食事時に飲むようになってから久しい。その延長上で発想されたのがノンアルコールカクテルだ。
「飲みたいけれどアルコールを我慢している。そういう方が家事や子育て、仕事で忙しい30~40代の女性にはとくに多いんです。かといって、ソフトドリンクだけではいまひとつ気分が出ません。ノンアルコールのカクテルがあったらいいな、と私自身も思っていました」
仕掛け人の1人であるサントリー酒類スピリッツ事業部RTD部の酒巻真琴さんが説明してくれた。
酒巻さんは、サントリー酒類が手がけるノンアルコールカクテル「のんある気分」の開発と育成を担当するブランドマネジャーだ。のんある気分は2011年10月の発売直後から人気に火がつき、年内の販売計画を60万ケースから100万ケースに上方修正するなどみごとなスタートダッシュを見せている。
しかしアルコールが入っていない「カクテル」とは、ソフトドリンクとどう違うのか? 酒巻さんがいう。
「実は社内にも『本当にお酒の味が出せるの?』という懸念がありました。しかしカクテルそのものや、ベースになるリキュール開発の知見を応用することで、たとえば『ちょっとした苦味』『複雑な香り』を再現することができたのです」
企画のスタートから2年を費やして中味の調整を進め、とうとうたどり着いたのがいまの味である。筆者自身が飲んでみた感想は、「本当にカクテルの味がする!」だった。