※2025年12月24日~2026年1月5日、60代以上を対象に「年金生活」に関するアンケートを実施。1464件の回答(65歳以上、配偶者あり)を得た。
不安なき生活は夫に財布をわたしてから
死生観の変化――それが、松山さん夫妻(仮名)が、充実した老後を形づくれたきっかけだった。67歳の妻・サトミさんは、一昨年にリフォームを終えたばかりのリビングで冗談めかした。
「実は、何十年も前から家庭内別居だったんです。昔は彼が定年したら離婚かな、なんて考えていましたから」
神奈川県の郊外に立つ築38年の分譲マンションに暮らす2人は、毎月夫のカズヤさんの愛車のベンツCLAで箱根や熱海、軽井沢などのスモールラグジュアリーホテルに足を運び、温泉を楽しんでいる。傍目にも仲睦まじく見えるが、離婚を考えるほどだった夫婦関係を大きく変えたのが、病だった。
松山さん夫妻は、中学校の同級生だ。カズヤさんは大学卒業後、大手メーカーで技術職として働いた。もっとも多い時期で年収約2000万円。54歳で早期退職し、取引先だった商社の経営にたずさわり、63歳で引退した。
夫妻が有する金融資産は、約1億1000万円。年金も手厚い。カズヤさんの国民年金や企業年金、個人年金の約45万円に加え、アメリカ赴任時代の年金がドル建てで、夫妻合わせて年間約150万円支給される。さらにサトミさんの国民年金が合算され、合計で月額約64万円。カズヤさんは言う。
「年金以外には、現役時代の専門知識を活かし、翻訳の仕事を続けています。ボケ予防を兼ねた趣味の延長ですが、助かっていますね。翻訳の収入をそのまま旅行に使えているので」
翻訳家としての収入月17万円はそのまま温泉旅行などの娯楽費に回る。ほかの支出は、食費16万円に加え、水道光熱費や自動車の維持費、自宅の修繕積立費などを合わせて月に50万円を超えるが、生活に不安はない。
「月の収入がそんなにあったんですね」
経済的な余裕は、サトミさんが思わず漏らした一言からも伝わる。
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