1月19日の沖縄県名護市長選で、「新基地建設に断固反対」を掲げた現職の稲嶺進氏が前自民党県議の末松文信氏を破り再選された。辺野古の新基地建設は、宜野湾市の普天間飛行場を使用する米軍の移設先として日米両政府が合意した計画。稲嶺市長の再選で、安倍政権は地元市民から「辺野古移設に反対」の意思表示を突きつけられたことになる。
辺野古の新基地計画は沿岸の埋め立てが前提だが、公有水面の埋め立てには都道府県知事の承認を要する。沖縄県の仲井真弘多知事は「県外移設」が選挙公約だったため、最近まで埋め立てを拒んできた。ところが、政府が提示した「平成33年度まで各年度予算3000億円以上の沖縄振興費」で態度を豹変。昨年12月27日、永年の懸案だった「辺野古の海の埋め立て」をついに承認する。
だが、数多の問題をはらむ米軍基地の受け入れはそう簡単には進まない。公有水面埋立法第4条「承認の条件」には、「環境保全に十分配慮せよ」と明記されているからだ。1月15日、県民194人が「承認は法の定める環境保全や災害防止などの要件を満たしておらず、知事判断は違法」として、承認の取り消しと執行停止を那覇地裁に同時提訴した。
また、仮に承認が合法と審判が下されても、名護市の承諾や許可、合意を必要とする法的手続きがいくつも残っている。たとえば、海岸の工作物設置申請で「漁港漁場整備法」。一般廃棄物処理で「廃棄物処理法」。防波堤や護岸工事では「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」。上水道受け入れ時の「水道法」。その他も現在、市が精査中だ。
ところが、すでに辺野古では土砂運搬業者も動いている。「もし、名護市の権限を無視して国が強制着工した場合、実効力を持つ対抗策が名護市にあるかどうかです」(沖縄国際大学教授・佐藤学氏)。
政府が本格的に強制着工すれば、地元住民の血が流れる懸念もあるのだ。
選挙当日、米ホワイトハウス関係者が「市長選に負けても手段はいろいろある」と洩らしたことを時事通信が報じた。「以前からある構想ですが、海兵隊をローテーションで展開するプランBではないかと思います」(玉城デニー衆院議員)。
米軍は今、世界的な再編期にある。日米関係の正に縮図である「日米地位協定」改定も含め、日本政府は率直な交渉をすべきだ。