企業のマネジャーが呆れる“お粗末”さ
「どっか下がるとこないの? と、私も聞きたい。『安藤さんが総工費を決めた』みたいに言われて。こんな大きなもの造ったことないですからね」
建て替え費用の試算額が膨らみつづけて大騒ぎとなった新国立競技場の問題。建築家の安藤忠雄氏は7月16日に記者会見を開き、自分はデザイン案を選んだだけで、費用については相談されなかったと語った。翌日、安倍晋三総理大臣が「計画を白紙に戻す」と見直しを発表したのはご存じの通り。
その見直しに至るまでの経緯を、振り返ってみよう。
文部科学省から国立競技場の管理運営業務を請け負っている独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が、建設計画に盛り込む施設の概要をまとめたのは、3年前の2012年7月。その有識者会議で、ラグビーやサッカーなどの競技団体、コンサートで利用する音楽業界などから出た要望は128項目あった。8万人分の客席、開閉式屋根などの高額な総工費につながる設備も含まれていたが、各方面からの要望を丸呑みにした格好だ。もともとJSCは運営が専門で、ゼロからの施設づくりは経験がないという。
同年11月、安藤氏を審査委員長とするデザインコンクールが開かれ“アンビルト(実現しない建築)の女王”ことザハ・ハディド氏の作品が最優秀賞に選ばれる。ところが、図面や仕様を決める基本設計に進むと、総工費が計画の3倍近い3462億円に膨らむ、という試算が出た。