フランス大統領 Francois Hollande(フランソワ・オランド)
1954年、フランス北部ルーアン生まれ。国立行政学院卒。79年、社会党入党。5月の大統領選挙で初当選。ジャーナリストの女性が事実婚パートナー。07年大統領選に敗れたロワイヤル元家庭・児童担当相が07年までのパートナーで、4人の子がいる。
初のEU首脳会議に参加するため、ブリュッセルまで特急列車を利用した。前大統領が専用機で飛んだ道のりだ。ミッテラン以来17年ぶりの社会党大統領は、移動3時間以内の外遊は列車を使う「普通の人」だった。就任直後の支持率は53%と高くもなく、色男でもない。ファーストレディは元美人モデルではなく、事実婚のジャーナリスト。当選は本人の人気よりも、前政権への批判票のおかげだ。就任演説では「優先順位は決定するが、すべてを自分で決めたりしない」と決断力より調整能力を強調した。
だが国際社会に与える影響力は普通ではなかった。先のG8サミットで、欧州の弱小国への成長支援を訴える新大統領の主張を受けて、欧州危機への対応には「財政再建と成長路線の両方を追求」という認識が示された。厳しい緊縮財政を主旋律とする流れはにわかに変化してきている。
年収100万ユーロ以上の富裕層への75%課税など、金持ちに厳しく弱者に優しい公約を掲げ、自らを含む閣僚報酬も30%引き下げた。フェミニストで34閣僚中17人が女性という男女同数内閣を実現。財政規律一点張りのメルケル首相のドイツとの関係悪化が危ぶまれたが、ドイツ通のエロー氏を首相に指名する配慮も見せ、「財政規律の原則は受け入れる」と妥協も。
極右の政治活動家で耳鼻科医の父と左翼のソーシャルワーカーだった母との政治論争を聞きながら父への反発と母への共感をはぐくみ、16歳には「大統領になる」と友人に語っていた。普通だが凡庸ではない。
落ちこぼれが出始め、ユーロ解体か政治統合かという岐路に立ちつつある欧州。その新時代を切り開くリーダーの資質とは、弱者に配慮し強者と妥協できる「普通」の非凡さではないか。