欧州の債務危機は、2009年10月のギリシャ政権交代による国家財政統計の不正暴露に端を発する。前年のリーマンショック後の経済危機はECB(欧州中央銀行)の融資で切り抜けたものの、新たな信用不安はポルトガルなど経済基盤の弱い国にも波及。その結果、ユーロ主要国の10年国債利回りには大きな差がついた。
その理由を、ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり主任研究員は「ギリシャは財政収支が赤字で、信用格付けもシングルAと低調でした。しかし、ユーロに加盟することで、その瑕疵が隠れたのです。ところがリーマンショックを機にリスクを選別する目が厳しくなったことで不正が発覚。格付けも投機的レベルに落ち、利回りも跳ね上がりました」と説明する。
この間、EUとIMFは10年5月にギリシャへの第1次資金支援を決定。こうした危機対応の努力で昨年12月をピークに各国の利回りはやや持ち直した。だが、この3月20日にはギリシャ国債が約144億ユーロの償還を迎えることから、EUは総額1300億ユーロの第2次支援を急いだ。
とはいえ、その実施に際してはギリシャが最低賃金を引き下げ、公務員も削減する。一方、ギリシャ国債を保有する民間金融機関等には元本の棒引きも強いるという痛みを伴う。伊藤氏は「それでもギリシャが財政を立て直し市場復帰するにはまだ時間がかかります」と見ている。ポルトガルも合わせデフォルトリスクと問題解決のプロセスは続くことになり、しばらくは予断を許さない。
(ライヴ・アート=図版作成)