日本の警察は、警察庁と都道府県警察という2つの組織に分かれている。例えば警察庁のトップは警察庁長官だが、警視総監は警視庁のトップとなる。そのほかには一体どんな違いがあるのか。ノンフィクション作家の野地秩嘉さんが解説する――。

※本稿は、野地秩嘉『警察庁長官 知られざる警察トップの仕事と素顔』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

東京都千代田区霞が関の警視庁本部庁舎
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「警察庁」と「都道府県警察」

日本の警察はふたつの組織に分かれている。

ひとつは中央官庁である警察庁だ。職員は国家公務員で、霞が関にある合同庁舎内で働いている(図表1)。

警察の総職員数、約30万人のうちの8000人前後が警察庁の職員で、東京大学卒、京都大学卒を主とするキャリア官僚の組織である。仕事は各県警を束ねる行政管理、政策を作るための企画立案、広域捜査の指導、連絡、調整など。企画立案というのは法律を作ることなのだけれど、憲法では立法は国会議員がやることになっている。そこで、企画立案という表現にしたのだろう。しかし、警察関連の法律は実際のところは警察庁の人間が作っていることは間違いない。

もうひとつの警察は都道府県警察だ。各都道府県には警察本部があり、地方公務員の職員が働いている。数は28万8000人。そのうち、警視庁(東京都警察本部のこと)に所属するのが4万6000人(図表2)。

「ノンキャリア」と呼ばれる警察の道

都道府県警察の職員は高校や大学を出て、各都道府県で採用され、警察学校を出た人たちだ。なかには東京大学、京都大学を出た人もいるけれど、ノンキャリアと呼ばれる。

都道府県警察に勤める警察官のうち、一部の人は警察庁に異動することもある。ただし、地方公務員として採用されているので、最終的には採用された都道府県に戻る。都庁や県庁に採用された職員が国の官庁に出向するケースと同じである。

また、県警本部で長年勤め、警視正となった場合、本人が望めば地方に勤務しながら国家公務員になることができる。この場合、県によっては給料が下がってしまうこともあるのだが、たいていの人は給料より国家公務員になる方を選ぶという。