1回の日本旅行で1000万円を使う外国人観光客がいる。彼らはミシュランの星付きレストランを食べ歩いたり、超高級ホテルに泊まったりするだけではない。人力車で丸の内を走り、コンビニ商品で作ったフルコースを要求する。世界の富裕層は、日本で“何に”これほどの金額を払っているのか。1組300万~1000万円の旅行を手がける「エクスペリサス」の事例から、富裕層インバウンドの消費構造を読み解く――。
東京駅前を走る人力車
写真提供=エクスペリサス
東京駅前を走る人力車

日本で遊ぶだけで1000万円が飛んでいく

「紫式部ゆかりの寺院を訪問したい」「隈研吾の建築を専門家に案内してもらいながら見て回りたい」「日本のコンビニ商品で作ったフルコースを食べたい」

オーバーツーリズムや中国人旅行者急減などで訪日外国人旅行(インバウンド旅行)の拡大に不透明感が漂うなか、このような富裕層外国人の要求にこたえることでインバウンドをさらに活性化させようと若いベンチャー企業が奮闘している。2017年に丸山智義代表が創業した旅行会社「エクスペリサス」だ。「日本全国で五ツ星の体験を創出する」ことを旗印に、各地の高付加価値の観光素材を生かした旅行コンテンツを作り、世界の富裕層向け旅行会社に販売している。

1回の旅行単価は1組300万円から1000万円と高額だ。しかも、この単価には日本への往復運賃は含まれていない。彼らは日本のどこを巡り、何を食べているのだろうか。

「コンビニ商品のフルコースが食べたい」

エクスペリサスの顧客は、ヨーロッパや米国が中心で日本が初めての人も多い。そのため、東京、京都、大阪などの観光プランが多くなりがちだが、丸の内や日比谷、銀座を人力車で走ったり、新宿ゴールデン街のバーを探訪したりといった、単なる観光名所巡りとは一味違ったユニークな体験プログラムを提供している。

日比谷の街を走る人力車。インバウンド富裕層向けの観光体験として人気だ
筆者撮影
日比谷の街を走る人力車。インバウンド富裕層向けの観光体験として人気だ

大阪では街の原風景が味わえる西成地区を徒歩で散策したり、神社仏閣の拝観ばかりになりがちな京都では茶道具、西陣織、楽焼などのクラフトマンシップに触れたりといった体験を用意することもあるという。また、高野山の宿坊体験など地方創生に直結する地方のプログラムにも力を入れている。

一方、日本への関心の強い顧客からは前述のようなさまざまなリクエストが出てくる。「日本のコンビニ商品のフルコース」を注文してきたのは、IT企業の社長を務める米国人男性。「日本人の日常を知りたい」と要望してきたもので、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンなど大手コンビニの当時の売れ筋商品ランキングを集めて提供し、満足してもらったという。

【コンビニフルコース】
・スパークリングワイン(フレシネ コルドン ネグロ ブリュット/マルティーニ アスティ・スプマンテ)
・オードブル(パストラミビーフの雑穀ボウルサラダ/スパイシーチキンと玉子のチョップドサラダ/ファミマプレミアム肉まん/4種具材の極上肉まん/生ハム)
・スープ(オニオングラタンスープ/北海道じゃがバターポタージュ)
・パン(金の食パン)
・白ワイン(デスパーニュ Blanc 白/甲州クヴェヴリ)
・魚料理(お母さん食堂 さばの塩焼き/サバの味噌煮缶)
・赤ワイン(シュヴァリエ・ド・ランシュ 2015/バロン・ラ・ヴェリエール 2015/ラ・シャルトリューズ・ド・セナック 2015)
・肉料理(ファミチキ/焼き鳥)
・締めのおにぎり(手巻 シーチキンマヨネーズ/新潟コシヒカリおにぎり『極』神戸牛すき焼き)
・デザートのあんまん
・最後は挽きたてのドリップコーヒー(セブンカフェ)