年収が2000万円を超えると、「何を買うか」より「なぜそれを選ぶか」のほうが難しくなる。SNSは「買うべき商品」を教えてくれるが、富裕層が「選択する前」に考えていることは教えてくれない。本稿では「旅行」をテーマに、富裕層が共有している判断基準を紹介する。ジャーナリストの坂元隆さんが、「アフリカでサファリを楽しむお金持ちの実態」を取材した――。
ボツワナのロッジ
写真提供=BELMOND
ボツワナ・サブティ地区の「サブティ・エレファント・ロッジ ベルモンド・サファリ」の部屋のデッキ

検索ではなく、口コミで集まる富裕層たち

サファリツアーの上級者向けデスティネーションとして知られるボツワナ。この秋、チョベ国立公園の奥地サブティ地区に日本人のツアー客を乗せた小型飛行機が着陸した。ゾウの水を飲む様子をデッキから眺めることのできるロッジに滞在しながら3日間のサファリを堪能したあと、再び小型機で世界遺産の湿原オカバンゴに飛び、さらに3日間カヌーや車を使ったサファリを楽しむ。

いずれの宿泊先もヨーロッパのホテル会社の経営する12室しかない豪華ロッジで、冷房完備はもちろん、プールがついているところもある。南アフリカのヨハネスブルクで前泊・後泊する11日間の添乗員同行ツアーだ。日本との往復航空便はデフォルトでビジネスクラス。旅行代金は2人1室で1人約300万円である。

「サファリツアーの集客はほとんど口コミです。しかもリピーターのお客さまが多い。厳しい自然の中に生きる現実の動物の姿を目の当たりにして、生命について思いをはせる。家でテレビを見ていては決してできない体験です。そこが魅力なんです」。ツアーを主催した旅行会社「グローバル」の柴崎聡社長は話す。

筆者撮影
柴崎聡社長

ボツワナはオーバーツーリズムによる環境破壊を避けるために、観光客数を制限し、国内移動も基本的に飛行機に限定するなどかなり厳しい観光政策をとっている。価格は高くなるがゆったりとサファリが楽しめる。柴崎社長はそこに目を付け、自ら現地に赴いてツアーの仕入れを行った。

「サファリ旅」の7割がリピーターに

富裕層向け旅行で最近目立って増えてきたのが、アフリカのサファリだ。「グローバル」のサファリの顧客は10年前くらいから増え始め、今ではすべての海外旅行顧客の2割程度を占める。しかも、一度サファリを経験した顧客の約7割がリピーターとなるという。ヨーロッパ方面の旅行を行きつくしたような70歳代の人たちが多い。最初はとにかく「行ったことがない国に行ってみたい」とサファリを試してみるが、実際に行ってみてサファリの奥深さに気づかされ、いつの間にかリピーターになってしまうというケースが多いようだ。

富裕層がはまるサファリの奥深さとはなにか。

真っ先に言えるのは、サファリで実際にどのような動物に出会うか、わからないということだろう。アフリカのサファリに出かける人がもっとも出会いたいと願うのが、「ビッグファイブ」と言われる、ゾウ、ライオン、バッファロー、ヒョウ、サイの5種の動物たちだ。しかし、一度のサファリで5種の動物すべてに会える保証はない。最初のサファリでゾウに出会えたら、次は野生のライオンを見てみたいと意欲が湧いてくる。ヨーロッパなどへのツアーなら旅程に入っている観光名所を見逃すことはまずないが、サファリツアーにはそのような保証はないのでなおさらだ。