毎年春になると、花粉症による目のかゆみ、鼻水、くしゃみなどに悩まされる人が多い。耳鼻科専門医の音良林太郎さんは「それらの症状を感じたら、我慢しないで適切な治療を開始してほしい。できるだけ早く始めたほうが効果的だ」という――。
日本の春の杉花粉
写真=iStock.com/nukopic
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花粉症の治療は「早め」が肝心

今や日本人の2人に1人がスギ花粉症だといわれています。花粉飛散量の増加により、以前よりも子どもや若年層の発症者が増加する一方、高齢で発症するケースもあるので若くないから大丈夫というわけでもありません。私自身も花粉症で、毎年、鼻水や目のかゆみに悩まされていて、まったく他人事ではありません。

【Close-up:「このつらい花粉症」からの卒業】はこちら
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さて、花粉症のケアでもっとも大切なのは、早めに治療を開始することです。花粉に繰り返し暴露されると鼻粘膜は少しずつアレルゲンをより敏感に感じるようになり、少量の花粉でも激しく反応するようになります。こうした鼻粘膜の変化こそが、シーズンを重ねるごとに症状が悪化していく根本原因なのです。

一方、花粉症の症状が出る前に、または出てから早めに治療を開始すると、鼻粘膜のヒスタミン受容体の発現が抑えられ、症状が軽くなります。これが「初期療法」と呼ばれるもの(※1)。これまで毎年、最初は我慢してしまったり、ふと気がついたら症状のピークを迎えていたりした人は、今すぐ市販薬を購入するか、耳鼻科を受診するかしましょう。それだけでずいぶんラクになるはずです。

※1 Mizuguchi H, Kitamura Y, Kondo Y, Kuroda W, Yoshida H, Miyamoto Y, et al. Preseasonal prophylactic treatment with antihistamines suppresses nasal symptoms and expression of histamine H₁ receptor mRNA in the nasal mucosa of patients with pollinosis. Methods Find Exp Clin Pharmacol. 2010;32(10):745-8.

まずは「点鼻ステロイド薬」を

さて、花粉症の治療といえば、飲み薬という印象があるかもしれません。でも、花粉症で最も影響を受けるのは鼻の「下鼻甲介かびこうかい」という部分で、もっとも頻度の高い症状は鼻水・くしゃみです。これは吸気が鼻から入ること、下鼻甲介が鼻で最も大きくて表面積の大きい構造であること、アレルギーによるヒスタミンの作用が鼻で盛んに行われることが原因です。

ですから、私が第一におすすめするのは、点鼻ステロイド薬です。ステロイドと聞くと不安を覚える人もいると思いますが、点鼻薬は鼻の粘膜に直接作用し、全身への影響はほとんどありません。

点鼻ステロイド薬は、飲み薬である「経口抗ヒスタミン薬」よりも、鼻水・鼻づまり・くしゃみ・鼻のかゆみのすべての症状で優れた効果を示し、生活の質(QOL)の改善にも効果的です(※2)。しかも、鼻腔内のアレルギー反応を抑えることで、神経反射を介して生じる涙目や目のかゆみにも有効。点鼻薬は正しい方向・量で毎日続けることで効果が出てきます。指示通りにしっかり使用し、シーズン中は継続することを意識してください。

それでも鼻づまりがほとんど改善しない人は、別の問題が潜んでいる可能性があります。例えば、鼻の仕切りの骨が曲がっている「鼻中隔弯曲症びちゅうかくわんきょくしょう」、鼻粘膜が慢性的に厚く腫れている「肥厚性鼻炎ひこうせいびえん」がある場合は薬で炎症を抑えようとしても、物理的な狭窄は解消されません。こうしたケースでは手術が必要です。耳鼻咽喉科で相談してみてください。

※2 Juel-Berg N, Darling P, Bolvig J, Foss-Skiftesvik MH, Halken S, Winther L, et al. Intranasal corticosteroids compared with oral antihistamines in allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. Am J Rhinol Allergy. 2017;31(1):19-28.