注射薬を使うなら何を選ぶべきか
こうした既存の治療を十分に試しても効果が得られない重症例には、注射薬である「オマリズマブ(抗IgE抗体製剤)」を使うという選択肢があります。アレルギーの引き金となるIgEに直接的に働きかけ、重症スギ花粉症患者の鼻症状・目の症状が有意に改善することが国内の臨床試験でも確認されています(※4)。値段が高いのが難点ですが、他の治療が効かない重症例では試す価値があります。
一方、以前「1シーズン効くアレルギーの注射」として使われていたケナコルト(トリアムシノロン)筋肉注射はやめましょう。2025年11月、同種のステロイド筋肉注射2製品のアレルギー性鼻炎への保険適応が削除されました。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会もこれを受け、ケナコルトAなどについても「推奨されない治療」と明示しています(※5)。この薬の最大の問題は、注射後に副作用が出ても元に戻せないこと。実際、肩に注射した結果、筋肉が萎縮してしまったという話も耳にしています。
※4 Okubo K, Ogino S, Nagakura T, Ishikawa T. Omalizumab is effective and safe in the treatment of Japanese cedar pollen-induced seasonal allergic rhinitis. Allergol Int. 2006;55(4):379-86.
※5 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 保険医療委員会「アレルギー性鼻炎に対するステロイド筋肉注射について」
薬と組み合わせる5つの生活習慣
また、耳鼻科での薬による治療と並行して、日常生活でも対策をすれば、花粉症の症状をかなり和らげることができます。以下のことに気をつけてみてください。
①マスクを適切に使い、花粉を家に入れない
花粉を体に取り入れないことが、花粉症対策の第一歩です。花粉飛散期に、外でマスクをしている人は多いと思います。マスクを継続着用した花粉症患者では、重症〜中等症の鼻症状が92%から56%に減少し、眼症状も改善したというデータがあります(※6)。帰宅時に玄関先で衣服を払ってから室内に入るひと手間も忘れずに。
②コンタクトレンズをやめて眼鏡にする
コンタクトレンズ使用者では目の症状が悪化しやすいことが知られています。特にソフトコンタクトレンズの表面には花粉が付着・蓄積しやすく、その花粉が涙で湿ることでアレルゲンが溶け出し、結膜に直接触れ続ける状態になってしまうのです。花粉のシーズンはコンタクトレンズをなるべく避け、眼鏡着用を心がけてください。花粉の侵入を防ぐレンズカバー付きの「花粉対策眼鏡」も選択肢のひとつです。
③鼻うがいを習慣にする
鼻うがいは地味ですが有効です。最近はドラッグストアでキットが売っていますので、これを買うのがおすすめ。日本なら水道水でほぼ問題ありませんが、長年使っていない水道、海外の水道の場合は煮沸して冷ましたお湯をつかいましょう。複数の臨床試験を統合した解析で、鼻うがいによるアレルギー性鼻炎の症状改善が確認されています。安価で副作用も少なく、他の治療の補助として取り入れやすいです。
④しっかり睡眠時間をとる
花粉症と睡眠障害は、双方を悪化させる悪循環の関係にあります。アレルギー性鼻炎患者の約4分の3は睡眠障害を合併していて、症状が重いほど睡眠の質が落ちることが明らかになっています。そして睡眠不足はアレルギー反応をさらに悪化させます。就寝前の服薬、花粉を室内に持ち込まない工夫、空気清浄機の活用がおすすめ。睡眠環境への投資は、翌日の症状に直接返ってきます。
⑤運動は「屋内」で続ける
花粉シーズンだからといって運動をやめてしまうのはもったいない。継続的な有酸素運動にはアレルギー性鼻炎を緩和する免疫調節効果があり、鼻腔内の炎症細胞が有意に減少します。その効果は約2カ月持続することも報告されています。ただし、花粉の飛散期に屋外で走れば暴露が増えます。ウォーキングマシンやエアロビクスなど、屋内での有酸素運動を取り入れてください。
※6 Mengi E, Kara CO, Alptürk U, Topuz B. The effect of face mask usage on the allergic rhinitis symptoms in patients with pollen allergy during the COVID-19 pandemic. Am J Otolaryngol. 2022;43(1):103206.

