プレジデント動画シリーズ「リーダーの器」。第5回はSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長です。無料会員登録で動画をご覧いただけます。ぜひご登録ください――。

「興銀よりもキタやんを500%とる」

ソフトバンクの役員会で、北尾吉孝さんはほとんど賛成しなかったといいます。満座の中で孫正義さんを徹底的に論破した。「コテンパンによくやっていましたよ」。それでも孫さんは、二人きりになるとこう言ったそうです。「キタやん、俺もねえ、満座の中であれだけやられると、ムッとくることあるよ。でも、キタやんは俺のために言ってくれてる。ソフトバンクのために言ってくれてると思ってるよ」。北尾さんより6つ年下の孫さんがそう言い切れること自体が、人間の器だ――。北尾さんはそう語りました。

二人の間には、もう一つ象徴的なエピソードがあります。北尾さんが興銀をはじめ11行のシンジケートローンを解消し、本邦初の財務代理人方式で500億円を調達しようとした時のこと。北尾さんは孫さんに言いました。「この件がうまくいかなかったら、僕をクビにして興銀に謝ってください」。孫さんの答えはこうでした。「興銀よりもキタやんを500%とる」。まだ若かった孫さんのその一言に、北尾さんは「大変な器だ」と感服したといいます。

孫さんを選んだのは「天意」

北尾さんが孫さんと出会ったのは、野村證券時代のことです。将来の経営トップと目されていましたが、敬愛する上司が損失補填事件で野村を去り、自身も会社にいる意味を失います。外資系から2億、3億という高額オファーが並ぶ中、北尾さんの心を動かしたのは、まだ天と地ほどの規模の差があったソフトバンクの孫さんでした。

決め手は何だったのか。北尾さんは「天意」という言葉を使います。代々、出版や新聞販売など「情報」に関わる家業を営んできたご先祖の血。孫さんが掲げる「デジタル情報革命」との符合。そして、たまたま国道246号沿いで引いたおみくじが「一番大吉」だったこと。「めったにおみくじは引かないんだけど、これも天意かなと思って」。

ソフトバンクで毎日のように顔を突き合わせて議論した日々を経て、やがて袂を分かちます。孫さんがADSLで通信事業にのめり込み、4期にわたって毎期1,000億円ずつ損失を重ねていく中で、北尾さんは「このままではソフトバンク自体が危うい」と判断しました。独立を切り出した時、孫さんはただ一言、「キタやん、悪いな。言い出せなかった」と言ったそうです。ただし、孫さんはひとつだけ条件を出しました。「キタやん、時々、食事を一緒にしてくれるか」。今でも年に一度は会い、テクノロジーの未来からAI、政治家の人物評まで、話題は尽きないといいます。「僕は少なくとも彼と話すのは楽しくてしょうがない。彼も多分、永遠の同志だと思っているのかもしれない」。