県警本部長を経て部長、局長…と上がっていく

さて、階級の話に戻る。

警察庁に入ったキャリアのスタートは警部補だ。以後の昇任にも試験はない。警察庁内と全国各地の警察本部を異動しながら経験を積んで地位は上がっていく。

警察庁に入った後、地方に出て交番や捜査の現場を経験する。その後、警察庁に戻り、係長として行政業務を担当する課長になる。

式で敬礼する警察官
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30代中ごろになってから現場の警察署長、もしくは県警本部の部長になる。

50歳前後で警視長になるので警察庁の課長や小規模県の県警本部長をやり、その後警視監として大きな県の県警本部長になる。

その後、警察庁に戻ってきたら、警察庁本庁の部長、審議官、局長を務める。

本庁の局長職は5つ。別に長官官房がある。5つとは生活安全、刑事、交通、警備、情報通信の各局だ(図表3)。

各県警本部には地域部(交番のおまわりさんや白バイ警官が所属する)、公安部(国家体制を揺るがすような事案に対応する警備警察で、東京都のみにある)があるけれど、警察庁にはそれに該当する局はない。地域部は現場の仕事だから、中央官庁の警察庁には必要ないのだろうし、公安は警備局のなかに含まれている。

また、警察庁は2022年から、サイバー攻撃やサイバー犯罪に対処する体制を強化するため、「サイバー局」を新設することにした。警察庁が直轄する「サイバー直轄隊」も設置する。これにより、現場の捜査権限は都道府県が持つ従来の警察のあり方が変わることになる。

警察庁長官と警視総監、本当に偉いのはどっち?

テレビのクイズバラエティでは「警察庁長官と警視総監はどちらが偉いのか」といった問いが出る。ためらうことなく、「警視総監」と答える人がいるくらいだから、世の中の大半はどちらが偉いのかよりも、まずは警察庁と警視庁の違いがわからないのではないか。

国税庁、資源エネルギー庁、海上保安庁、公安調査庁など、「庁」が付くのはほぼ国の組織だ。警察庁もしかりである。そして、「庁」は、府や省の「外局」として置かれているものを言う。

ところが、警視「庁」は国の組織ではない。東京都に属するのに、庁が付くところが、ややこしい。警視庁は東京都にある都道府県警察のこと。神奈川県警や北海道警と同格だけれど、呼び名が警視庁となっているだけだ。

どうして? と問われたら、明治以来の由緒正しい呼称だから変えられない、と答えるしかない。長官は国税庁にも海上保安庁にもいるけれど、総監と名の付く人物は日本に数少ない。

「総監の方がいかめしそうだし、偉いんじゃないか」と誤認する人がいても仕方のないことだろう。