言いがかりをつけ、法外な慰謝料を求める悪質クレーマーにはどう対応すべきか。弁護士の島田直行氏は「クレーマーは思考のプロセスを経ず、とりあえず慰謝料を要求してくる。『何をもって慰謝料を主張しているのか』を確定させ、要求を書面で提示させるべきだ」という――。

※本稿は、島田直行『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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“カネ”で解決は最悪な選択

クレーマーは執拗に関わってくるため、担当者としても「どうにかしたい」と考える。もっとも手っ取り早い解決方法は、金銭的解決である。

島田直行『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』(プレジデント社)

しかし、「いくらか支払って、この地獄から逃れることができるならば」と安易に考えることは危険だ。もっとも簡単な方法は、もっとも危険な方法でもある。「クレーマーをカネで解決させる」のは最悪な選択であって、本質的な解決にはならない。

いったんカネで解決してしまうと、あらゆるトラブルをカネだけで解決する社風が次第にできあがってくる。そんなことをしていたら、あっという間に会社の資産がなくなる。しかも「うちの社長はいつもこれだ」と社員のモチベーションも次第に下がってくる。

カネとはおそろしいもので、いったん使いだすと「使うこと」があたりまえになってくる。カネに頼らないクレーマー対応のノウハウも蓄積されない。

クレーマーは、会社がカネを出すことがわかれば、できるだけ多く手に入れようと知恵を絞る。いったんカネを受け取っても、「あれも損害だ」と事後的に指摘して、さらなる要求を突きつける。

会社としても「カネで解決した」という後ろめたさがあるため、言われるがまま支払いに応じることになりかねない。