入院期間が長引いた場合

ケースによっては、通院が不必要にいつまでも続く可能性もある。こういった場合の慰謝料は、通院期間がひとつの基準になるため、通院期間が長くなると治療費のみならず慰謝料も不必要に高くなることが懸念される。不必要に治療が長引く場合は、いずれかの段階で治療費の負担を停止することもある。

治療費の負担を打ち止めすると、「被害者の意向に反して打ち切るなどおかしい」と言ってくる人もいる。そういうときは「治療の範囲について争いがあるのであれば、訴訟で判断をしてもらうほかにないです」と答えるのもひとつの手である。

訴訟においては、被害者とされる者が要求する治療費のすべてが損害として認定されるとは限らない。認定されるのは、あくまでも会社のミスと因果関係があるものである。その他のクリーニング代、あるいは交通費といった損害についても、同様に領収書などの客観的な資料があることを確認したうえで支払いに応じるようにする。

クレーマーのなかには、実際には損害が出ていないのに「将来において損害になる」ということでまとめて請求してくることもある。そもそも損害が発生していないのに、発生したと請求してくる者もいる。根拠もなく支払うことがないよう、社内で支払基準を定めておく。

いったん支払ってしまうと、クレーマーは「ここはカネが出やすい」として、より多くの請求をしてくることが懸念される。賠償をするときには、事実の確認ができてからという姿勢を徹底していただきたい。

支払った後は必ず合意書を交わす

損害が確定して支払いということになったときは、「これで終わり」というカタチをできるだけ作るようにする。具体的には、合意書や示談書といった書面を作成する。

「このくらいのことで書面のやりとりはわずらわしい」「署名を求めるとかえって相手の感情を逆なでするかもしれない」といった考えもあるかもしれない。しかし、そういった心理的負担などを考慮したとしても、できるだけ作成するべきだ。それが社員と企業を守ることになる。

クレーマーは流動的である。いったん収まったと安堵していたら、しばらく時間をおいて再度要求してくることもある。そういった繰り返しを法的に縛るためにもなんらかの合意書面は作成しておくべきだ。