商標登録していようがいまいが喧嘩を売られる

この夏、2020年東京五輪・パラリンピックのエンブレム問題が、話題となった。7月に東京五輪組織委員会が発表したエンブレムのデザインが、ベルギーの国立リエージュ劇場のロゴに酷似していたのだ。

組織委は「問題ない」と主張したが、エンブレムをデザインしたアートディレクターの盗用・無断転用歴が次々と発覚。組織委はこのエンブレムの使用を中止し、新たに選定し直すと発表した。

「弁護士が『法には触れにくい』などとコメントを出しているが、あれは国内の感覚。何もわかってない」(平塚)(時事通信フォト=写真)

このアートディレクターのパクリ作品とパクリ元の写真を比較したサイトがある。どう見ても常習犯である。バレなければOK、もしくは相手が商標登録していなければ、ちょっと手を加えるだけで見逃される国内で甘やかされてきたと思われる。

著作権の裁判では、過去の著作物も俎上に上る。広告代理店の関係者でもない限り、著作権侵害罪による逮捕の可能性アリと見るのが妥当だ。

それでもナアナアですませようとする国内の通例とは対照的に、少しでも似ていれば、商標登録されていようがいまいが喧嘩を売られるのが世界標準。海外の法廷での訴訟に加え、報道機関へのリークも含めたありとあらゆる手段で攻め立てられる。懲罰的賠償を上乗せする国もある。

国内のデザイナーや弁護士があれこれ分析しても、あまり意味はない。似ているものは似ている。裁判官の見方次第でどう転ぶかわからぬリスクを負うことを、まずは認識すべきだ。「身に覚えがない。俺は正しい」ではなく、「いざ訴えられたら勝てるか否か」から発想をスタートさせないと、大怪我をする危険がある。

今回の元凶は、当事者たちが世界の知財の常識にあまりに疎すぎたことだ。海外経験のないメンバーの組織委が、現行のまま新たに選定を進めても、同じ愚を繰り返しかねない。