トラブル報告、価格交渉、歓送迎会のスピーチ……。オフィスや取引先、接待の場で成功するための話し方を達人に聞いた。
雑談がすべると商談がパー?
お笑い芸人のようにトークひとつでみんなを楽しませることができたら……。それに比べて自分のトーク力ときたら、気の利いたことのひとつも言えない――。
そんな悩みを抱えている人は多いだろう。テレビを見れば、フリートークの番組で人気芸人たちが巧みな話術で次々に周囲を笑いの渦に巻き込んでいる。こちらもぐいぐい引き込まれ、釣られて笑ってしまう。
冷静に聞けば、大したことのない日常の出来事なのに、話術でそこまで聞き手を引っ張り込むのだ。
そういう話し上手を日頃から目にしていると、雑談や接待でも自分にはしゃべりの才能がないと落ち込み、憂鬱な気分になってくる。
人気テレビ番組を多数手がける放送作家で、お笑い芸人向けのスクール講師も務める田中イデアさんは「雑談ですべっても商談がパーにはなりませんよ。芸人さんたちのトークが基準と思い込んで、自分でハードルを上げている人も多い」と言う。
お笑い芸人なら笑いを取れなければ死活問題だが、我々は素人。そんな強迫観念を捨てて、普通にしゃべることを考えればいいのだ。
「話し下手でも構いませんが、黙っていることが美しいという時代ではありません。かつては『沈黙は金』と言われましたが、今は『沈黙は禁』。自分の気持ちを伝えないことには、恋愛も仕事もうまくいかない時代です。下手だから伝えなくていいというわけではありません」(田中)
アサヒビールの中国広域支社で量販店向け営業を担当する伊藤大悟さんは入社10年目。現在は広島を拠点に、爽やかな笑顔とハキハキとしたやり取りで取引先からも絶大な信頼を得ている営業マンだ。
そんな伊藤さんも「実は人見知りで、コンパに行っても緊張して話ができないタイプ」だ。