トラブル報告、価格交渉、歓送迎会のスピーチ……。オフィスや取引先、接待の場で成功するための話し方を達人に聞いた。

Case2.また会ってみたいと思わせる
世間話で気に入られる手法は時代遅れ。いかに相手の役に立てるかをアピールしよう。

褒め上げて不安や悩みを引き出す

商談やプレゼンテーションが終わって、相手から「また、この人と会ってみたい」と思ってもらえるようになれるかどうかの境目とは一体何か――。

提案した商品やサービスが相手にとって有益であることもさることながら、短い時間のなかでいかに信頼関係を築けるかにかかっている。

一昔前なら「昨日のジャイアンツは……」「最近ゴルフのスコアはどんな調子ですか……」といった世間話をしながら人間関係を構築していくのが常道だった。しかし、何事もスピード化が求められるこの時代において、そうした手法はもはや時代遅れであり、「そんな話をしている暇なんかないよ」と煙たがられるのがオチである。では、どうしたらいいのだろう。

「そうしたときに役立ってくれるのが『吉野式褒め殺し話法』です。商談で訪問する前には、当然先方のことを調べていきますよね。そうしたら、名刺交換をしたすぐ後に『御社はこの分野で素晴らしいご発展を遂げていらっしゃいますね』『最近発表された新技術は画期的なものですね』とか、『いま、ここに来るまで社員の皆さんの様子を拝見させていただきましたが、意欲的にいきいきと働かれていて、とても素晴らしい職場ですね』などと、相手のことを徹底的に褒め上げてしまうのです」とプレゼン話し方研究所社長の吉野真由美さんはいう。

すると、面白いことが起こるそうだ。日本人はシャイな性格な人が多く、褒められるとつい気分が舞い上がってしまう一方で、どこか気恥ずかしさを感じてしまう。そして、「そんなことはないですよ、いろいろと研究開発体制には課題が多くて」「社員も決して一枚岩というわけではなくて」といったような先方が抱えている悩みや不安が、口をついて出てくるようになるのだ。

その悩みや不安を解決することが実は先方の潜在的な“夢”であり、同じような夢の実現に自社の製品やサービスが実際にどう役立ってきたのか、すかさず過去の成功事例をアピールして信頼を勝ち取ってしまうようにする。