実際に吉野さんからこの褒め殺し話法を伝授されたコンピュータ会社のセールスマンが最新の機器に取り換えたばかりのシステム会社を訪れ、「いま、これだけの整備をしているところはほかにはそうありません。社内のITインフラも充実していて何の問題もないのでしょうね」と褒め上げたところ、「実はね、データベースに問題があってさ」といわれ、何千万円単位の商談につながったことがあるそうだ。
もう一つ褒め殺し話法のすごいところは、悩みや不安を聞くことによって、相手から「この人は自分のことを理解してくれている」と思ってもらえるようになり、一気に人間関係を構築できることである。そうなると「次もこの人に会ってみたいな」という気持ちが自然と湧いてくるようになって、次回のアポイントメントを取れる確率もグンとアップしてくる。
一方、クリエイティブ・ディレクターでプレゼンの達人でもある1st Avenue代表マンジョット・ベディさんの場合はアイコンタクトを活用した話法で先方に自分の存在を印象付け、ビジネス上の息の長い付き合いへつなげている。マンジョットさんは「単に目線を合わせるのではなく、相手の利き目に焦点を合わせながら話をします。それを2、3回繰り返すと、『私にずっと話しかけてくれていた』という気持ちになって、親近感や信頼感がぐっと増します。プレゼン中に眠ってしまうこともなくなります」と話す。
これなら、いますぐ社内の会議でも応用ができ、試してみる価値は十分にありそうだ。しかし、何十人と大勢の人を前にしたプレゼンの場合はどうしたらいいのだろう。マンジョットさんは次のようにいう。
「そのようなときは、会場の左奥から手前へ英字の『Z』を描くように順にアイコンタクトを送ったらいいのです。そうすればすべての人とコンタクトをとることができます」
【○】皆さんいきいきと働かれていて素晴らしい職場ですね。
【×】最近ゴルフの調子はいかがですか?
吉野真由美
同志社大学卒業後、生命保険会社などを経て英語教育会社に入社。12年間連続でセールス上位入賞。2005年、プレゼン話し方研究所を設立し現職に就任。
マンジョット・ベディ
1969年、インド生まれ。17歳のときに来日。2006年、1st Avenue設立。クリエイティブ・ディレクターとして多方面で活躍している。