上司の入れ替わりが激しい昨今、組織における自分の功績や価値は黙っていても伝わらない。だが、伝え方を間違えれば反感を買うだけである。効果的なセルフプロモーションと単なる自慢話の境目はどこにあるのか。
ここ数年、マネジャークラスの転職がかつてないほど多くなっている。3、4年前とは別の上司にレポートしているという読者が大半であろう。これはとりもなおさず、組織の記憶から抜け落ちていそうなこと、つまり自分が組織にどれほど価値をもたらす人間かという認識を、自分で補わなくてはいけないということだ。
「人々は一世代前ほど長居をしなくなっている」と、カリフォルニア州の経営コンサルタント会社、クラウス&アソシエイツの社長、ペギー・クラウスは言う。「だから自分がどんな仕事をしているのかを他の人たちに知らせる必要がある。あなたのすばらしい仕事ぶりを、今のマネジャーが次のマネジャーに伝えてくれるとは期待できないのだから」。
自分を売り込むという微妙なさじ加減を要する技術をマスターすることは、キャリアの成功に欠かせない要件だが、容易なことではない。度が過ぎれば、スタンドプレーをする奴というレッテルを貼られるし、目立つのを避けていたら、受けてしかるべき称賛を逃してしまう。
セルフプロモーションは必要なスキルとさじ加減で行わなければ、効果どころか害のほうが大きくなる、とクラウスは言う。これは彼女の著書、『Brag! The Art of Tooting Your Own Horn Without Blowing It』(2003年/邦訳なし)のサブタイトルでも強調されている点だ。クラウスはこう語る。「自慢屋はいつも私、私で、『私がこれをした』『私があれをした』となる。脈絡もなく話をつなぎ合わせて延々と語り続ける。彼らは他人の功績を認めない。ともすると誇張したり嘘をついたりする。私はこれを恥知らずなセルフプロモーションと呼んでいる」。
それに対し、効果的なセルフプロモーションは、売り込みの会話に何かを付加し、会話に参加する人に何かを与えるものだ、とクラウスは言う。効果的なセルフプロモーションを行う人は、それまでの会話と何の関係もない誇大な自己宣伝をいきなり持ち出すようなことはせず、話の流れの中でさりげなく自分を売り込み、それとともに参考になる情報を提供する。また、セルフプロモーションを逸話に織り込んで、(クラウスいわく)たまたま自分が主役を演じた物語を熱っぽく語る。