社員が悪いニュースを報告したり、異論を唱えたりするのを促す施策や仕組みの設けられていない会社は、社員が重要な情報を隠すのを事実上、助長している。ITソリューション企業のインパクト・イノベーションズ・グループ(以下、インパクト)で、数年前に起きたことを例にとってみよう。

同社の20人のチームは、現場マネジャーの指揮のもと、クライアント企業内で仕事をしていた。チームのパフォーマンスとクライアントの満足度に関する情報を本社に伝えるパイプ役は、主として現場マネジャー。彼の報告では、万事順調だった。チームのパフォーマンスについて本社が情報を得る先は、ほかにはクライアントのCIO(最高情報責任者)だけで、そのCIOは自分の会社が受けているサービスにおおむね満足していた。彼の同僚のなかには満足していない者もいたが、彼もインパクトの現場マネジャーも、それを本社に伝えなかった。契約更新の時期がきたとき、インパクトはその契約をライバル企業に奪われた。