重要な情報がそれを必要とする人間のところに届くのを妨げる、どの組織にもある障壁を打ち破るために、マネジャーや組織が採用できる戦略を以下にいくつか紹介しよう。
●情報を伝えた人間を冷遇しないと約束し、その約束を守る
自社の文化を変えるために、インパクトはまず、「正直第一」を自社の中核的企業価値と位置づけた。同社の共同創設者でCOO(最高執行責任者)、ジョン・ピオットは言う。「われわれはマネジャーにこう伝えている。『悪いニュースを伝えたことで君たちが不利な扱いを受けることはないが、真実を伝えなかったら君たちの立場は悪くなる。われわれが悪い情報を知らされず、いきなり問題に直面するようなことがあったら、それは解雇の理由になる。真実を伝えているかぎり、われわれは必ず問題に対処する方法を考え出す』」。
「真実を伝える人間を冷遇しない」というのは常識のようだが、実行するのはきわめて難しいと、『Bringing Out the Best in Others(他者の最善を引き出す)』(2003年/邦訳なし)の著者、トム・コネランは言う。自分の部署の業績に影響する悪いニュースを知らされたマネジャーが、腹立たしさを覚えるのは無理もないからだ。
だが、そうした感情に屈してしまったら、コミュニケーションの経路を確実にふさぐことになる。「人件費が予算をオーバーしたと報告したマネジャーに、私が激昂して『17.5%を超えたなどという報告は2度と聞きたくない』という類のことを言ったとしよう。この先、そのマネジャーの部署の人件費が19%になることがあったとしても、私はそれを知らされない」。
悪い知らせを聞くと怒りが顔に出るマネジャーは、その怒りが状況に対するもので、それを伝えた部下に対するものではないことを説明すべきだと、コネランはアドバイスしている。
ラリー・ジョンソンとボブ・フィリップが、『Absolute Honesty:Building a Corporate Culture That Values Straight Talk and Rewards Integrity(絶対的な誠実さ:率直な話し合いを促し、誠実さに報いる企業文化を築く)』 (2003年/邦訳なし)で指摘しているように、メッセージを無視することも、部下の意欲をそぎ、2度とこんなことはしないでおこうという気にさせる。
社員に対する信頼を示すことも必要だ。ジョンソンは問いかける。「あなたは会社の業績や財務に関する数字を社員に知らせているか。社員に意思決定の権限を与えているか。あなた自身や会社がミスをしたときに、それを社員に伝えているか。会社の戦略計画を積極的に社員に知らせているか」。