トラブル報告、価格交渉、歓送迎会のスピーチ……。オフィスや取引先、接待の場で成功するための話し方を達人に聞いた。

Case2.少ない時間でアピールする
忙しくて5分しか時間がないと言われても、焦りは無用。最優先すべきは、次回のアポ取りだ。

成功例を2つ、各30秒以内で用意せよ

プレゼン話し方研究所社長 吉野真由美さんの褒め殺し話法(http://president.jp/articles/-/13812)は3段階で構成されている。ステップ1で褒め上げて、ステップ2で成功事例を提示する。そして、最後のステップ3で本題の商品説明に入るという流れだ。このうちステップ2の成功事例のアピールにはコツがあって、成功事例1つについて30秒以内、それを2つにとどめることがポイントだという。

「1つでは偶然かと思われ、3つ以上になると話が散漫になって相手の記憶にとどまらないからなのです」と、その理由を吉野さんは説明する。「30秒以内」というと短いように思えるかもしれない。しかし、次のようなフレーズはどうだろう。

「震災を受けた東北地方にある会社で4時間だけセールスの研修をしたところ、翌月には過去最高の売上高を達成しました」

このようにわずか10秒程度の話でも十分にアピールが可能なのだ。そして、次のステップ3の商品説明も最長で20分以内に終える。実は「いま忙しくて、5分だけだったら時間を空けられる」といわれたときにも、この褒め殺し話法が存分に活用できるのだと吉野さんはいう。

「短い時間しかないのなら、お金の話や商品説明は後回しにして、次回のアポイントメントを取ることに集中することが何よりも大切です。それには、やはり『また会いたい』と思わせられるかどうかが鍵を握ってきます。そこで、相手を褒め上げて抱えている悩みや不安を引き出し、その解消につながりそうな成功事例2つを提示するステップ1と2に徹するわけです。ここまでなら5分あれば十分ですし、『うちにはどんな提案をしてくれるのか、もっと話を聞きたい』という気持ちにもっていけます」

こう語る吉野さんだが、実際に「5分しかないよ」といわれて褒め殺し話法を始めたところ、結局1時間以上も時間が経っていたということがよくあった。商談を終えてから「お忙しいところ、こんなに時間をオーバーしてしまって申し訳ありません」と謝罪すると、「いくらでも時間はやりくりできるし、あなたの話を聞くことのほうが仕事にとって大切なことに思えたので」といわれることが多かったそうである。