【6】「自分の熱弁に酔いしれる」“一人カラオケ”の営業マン
これまでは営業マンの基本行動にかかわる部分を見てきた。話を商談の場面へと進めよう。商談でも相手起点の発想ができない“自分起点営業マン”が多いようだ。ファミリーマート商品本部で加工食品・菓子を担当し、大手メーカーと取引をする永井雄一氏が話す。
「セールスで勘弁してほしいのは、自分の説明に酔いしれる方です。資料をいっぱい用意して、“この製品をつくるのにこんなに苦労したんです”と開発秘話を延々しゃべる。でも、顧客のニーズと結びつかなければ、“ああ、そうですか”というしかありません。聞きたいのはそこではないというこちらの意図を察知して、臨機応変に話を切り替えていける方は核心に入っていける。どんなに一生懸命でもその向かう先がずれると、受け手には逆に邪魔になることを知ってほしいのです」
自分起点から相手起点へ、いかに切り替えるか。アイフルホームの竹腰氏も、「営業マンが新商品の特徴を一生懸命アピールする。でも、同じ説明をどこでもしているのでしょう。われわれが知りたいのはつくり手の立場からの特徴ではなく、アイフルホームにとってどんな意味をもつのか、当社と契約をしている地域の工務店、さらにはユーザーにとってどうなのか。顧客の顧客、その先の顧客にまで目線を配り、階層ごとのメリットを説明できる方はすばらしい営業です」バイヤーの反応をとらえる察知力と顧客目線で発想できる想像力。それが欠けると次のような勘違い営業が現れる。
【7】「自社のためだけに頑張る」“独りよがり”な営業マン
注目を浴びるLED(発光ダイオード)照明事業で50%を超えるシェアをもつパナソニック電工照明事業本部の大利富夫氏は、こんな営業マンに出会った。
「LEDは特許関係が複雑なため、調達先の条件は特許侵害がないことです。そのメーカーは多少懸念があり、採用を見送った。すると営業マンが“形だけでもいいから何とか使ってくれ”といってきた。うちで採用された実績があれば、別の大きな注文が入るという。その人は自社にとっては注文をとるため手を尽くす立派な営業マンでしょう。でも、私たちにはナンセンスでしかありません」
いくら頑張っても、独りよがりであるかぎり、成果には結びつかない。